1月7日 感染症・アレルギー・膠原病 ②

 

肝機能障害を認めたために問診方法に苦渋した50代男性(その2)

 

数日前より全身倦怠感、食欲不振があるため、初めて来院された方は、定期通院中の病院の循環器科から降圧剤、内分泌代謝科から血糖降下剤の処方を受けていました。

 

「検査は来月、いつもの大きな病院でするので、だるさと食欲不振だけでも何とかしてほしい」と何度も切望され困り果てました。

 

とはいえ、適切な治療のためには系統的な診察は重要です。右季肋部に軽度の圧痛に加えて右肋骨部を軽く叩打すると明らかな痛みを訴えました。そこで直ちに肝炎を疑い、とりわけ非アルコール性脂肪肝炎を疑いましたが、患者本人が持参した前月の血液検査の肝酵素はいずれも正常範囲でした。

 

それでも、最低限度の検査の必要性を説いて実施した胸部X線写真では異常はありませんでした。また、糖尿病が合併しているので、まず脂肪肝を疑い腹部超音波検査で確認したところ、軽度の脂肪肝は認めました。

 

諸症状の進展が短期間であるため血液検査で肝機能と急性肝炎に関与するウイルス項目を調べました。

 

ウイルス性肝炎の診断をする場合に問題なのは、A、B、C、D、Eの5種類のウイルスのうち、わが国で検査できるのが、A、B、Cの3種類のみであることです。D型は不完全ウイルスであり、B型ウイルスとの共存でのみ増殖できるので、B型ウイルス肝炎でない限り問題はありません。ただし、E型肝炎は人畜共通感染症であり、十分に加熱調理されていない猪、豚、鹿の肉あるいはレバーを食したときに感染することがあるので、食生活の問診が重要です。ジビエ料理は好きだが数年前からは食していないとのことでした。

 

<明日につづく>