杉並国際クリニックでは、初診(再初診を含む)は予約制としているため、急性呼吸不全に遭遇することはほとんどないため慢性呼吸不全の話を続けてきました。しかし、このことは、まったく急性呼吸不全と無縁になったことを意味してはいません。
その理由は、慢性呼吸不全で最も割合の大きい慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんには、しばしば急性増悪が見られるからです。しかも、増悪により呼吸機能の低下、生命予後の悪化を招くため重要な病態です。
COPDの急性増悪とは、息切れや喀痰・咳嗽の増加、胸部不快感の増強などにより安定期の治療に変更あるいは追加が必要な状態です。
COPDの増悪は病態が進行している患者さんほど頻度が高くなります。その原因の多くは呼吸器感染症や大気汚染ですが、約30%は不明です。
治療のために入院が必要になることがあります。
入院の適応は、患者の病態のみならず背景も加味して判断します。
以下の通りです。
低酸素血症の悪化
呼吸性アシドーシス
安定期の気流閉塞の重症度(一秒率:%FEV₁.₀<50%)
初期治療に無反応
重篤な合併症
頻回の増悪
高齢者
不十分な社会的サポート
初期治療はABCアプローチが基本です。
すなわち、
A(antibiotics:抗菌薬)
B(blonchodilators:気管支拡張剤)
C(corticosteroids:副腎皮質ステロイド剤)
抗菌薬は喀痰の膿性化や人工呼吸器管理例で特に考慮します。
ステロイドの至適投与期間は様々な見解があります。
症例によっては1週間以内の投与も考慮されます。
インフルエンザワクチンに関して、65歳以上で肺炎による入院や死亡率を減らすことが報告されているので、積極的に接種することが推奨されています。
ただし、23価ワクチンに関しては、COPD患者の生命予後の改善は報告されていません。
インフルエンザに罹ったことを理由に、ワクチン接種を拒否する方が少なくありませんが、少なくとも65歳以上の方はインフルエンザワクチンのみは接種していただきたいと考えています。
さらに、COPDの急性増悪で集中治療室への入院の適応となる場合があります。これについては、明日解説します。
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