第4週:内分泌・代謝病・神経病  ⇒ 脂質異常症について

11月18日 脳心血管病予防のための脂質管理(管理目標を中心に)

 

1) 令和時代の医療モデルとしての脂質異常症の医学

医療は時代とともに進み、時代も医療とともに歩んできたように思われます。

 

たとえば、昭和の高度経済成長後から高齢化社会、平成の30年間は高齢社会・超高齢化社会、そして超高齢社会を本格的に迎えつつあるのが令和の時代ということになりましょうか。


それで各時代の医療の在り方は成功してきたかというと、医学の進歩ほどではない、後手に回っているというのが私の見解です。

 

そうした中で、令和時代の医療の方向性のモデルになるとして、私が注目しているものの一つが脂質異常症対策です。

 

 

昭和の医療は、《働けていれば健康である》という国民の健康観に基づく医療でした。体調不良で働けなくなると病院に行くが、働けるようになれば「治った」と自己判断して治療を中断してしまう方がたくさんいた時代です。


そんな患者さんたちに「先生、お陰様で治りました。先生は患者離れもよい。やっぱり先生は名医です。」などと感謝されて喜んでいるような迷医がたくさん張り切っていた時代だったそうです。

 

しかし、定年を迎えて年金暮らしになると、そうした患者さんは、それまでの不健康のツケが一気に噴き出し、通院が日課のような高齢者をたくさん生み出して待合室が老人クラブのよになっていました。

 

それでも治療が間に合わず、脳卒中で亡くなるか、麻痺で苦しむ方が少なくなく、「寝たきり、ボケ」という言葉が急速に広がりました。

 

 

平成の医療は、《症状がなければ健康である》という国民の健康観に基づく医療でした。この時代の患者の特徴は、情報化社会を反映してか自分勝手に素人診断まで行って、その根拠の乏しい診断名をもとに、自分の好みの治療を施してくれる医師や医療機関をはしごするようなドクターショッピングがはびこりました。


症状がある間は通院するが、短期間で症状が消失してしまうと「治った」と自己判断して治療を中断してしまう方がたくさんいた時代です。そんな患者さんたちは、挨拶もなく、勝手に治療を中断してしまいます。そして、20年ぶりで来院して親類のように「私の主治医は、先生です。先生ほど立派で良い先生はどこにもいませんでした。」などとおだてられることがありましが、決してうれしくはありませんでした。

 

良い先生の意味が、(都合の)良いコンビニ先生の意味に聞こえてくるからです。

 

そうして、そんな患者さんの態度には成長どころか、後退が感じられるからでした。

 


そして、この時代は「寝たきり、ボケ」という言葉は、底辺を拡大しつつ介護保険制度の普及と共に「要介護、認知症」という言葉に置き換わったまま、抜本的な解決策を講じることに関しては、国も国民も無策のままでした。

 


また、ストレス社会を反映して、平成8年に「心療内科」という標榜科目が認可されると、本質的に内科の領域であるにもかかわらず、ほとんどの精神科医が無節操にも「心療内科」の標榜を独占してしまうという事態となり、「心療内科」は軽症精神病を扱う診療科との誤解を国民に与えてしまう結果を招くことによって、令和の時代に大きな活躍が期待できたはずの、本来の「心療内科」の発展を決定的に損ねてしまいました。

 

さて、令和の医療は、どのような健康観に基づいてすすめられていくべきでしょうか。国民全般の健康観を変えていくことがいかに難しいか、というのは自分が直接診療させていただいている患者さんでさえ難しいことで容易に実感できます。水氣道®を始めて20年を迎えようとしていますが、やはり、先進的な取り組みであったとの自信を深めています。その裏付けは、会員の皆様の健康増進の成果からも明らかです。

 


水氣道に長く励んでいる皆様に共通している健康観は、《少なくとも今後10年間の自分の健康に責任をもってこそ健康である》というものに近いのではないかと観察しています。実際の医療に比べて学問としての医学の進歩は目覚ましいです。医学は、すでに10年先のリスク評価をすることが当たり前になってきています。その代表が、脂質異常症の医学です。

 

明日から、令和時代の医療モデルとしての脂質異常症診療について紹介いたします。杉並国際クリニックでは、脂質異常症に直接関連する独自の診療シート<動脈硬化症予防・治療管理基準>を作成して、皆様にフィードバックしております。

 

<明日に続く>