学会速報 16日(土)午前の部まとめ

1月16日(土)

8:20‐11:20 合同集会 学術講習会

 

座長:岡田宏基(香川大学総合診療部)

 

テーマ(演者・所属):

1.サイコオンコロジー概論、抑うつ・不安・せん妄

  吉内一浩(東大心療内科)

 

2.患者ー医療者関係を円滑に行うためのコミュニケーションスキルについて

  四宮敏章(奈良県立医科大学緩和センター)

 

3.がん患者の体と心に寄り添う意思決定支援のすすめ

  大島彰(九州がんセンターサイコオンコロジー科/緩和ケアセンター

 

 

朝からの講習会ですが、杉並国際クリニックの今後の医療の立ち位置と深くかかわってくるであろうテーマでした。

 

サイコオンコロジーとはサイコ(精神)・オンコロジー(腫瘍学)

⇒精神腫瘍学という比較的新しい医療分野です。

 

精神腫瘍医という専門家をリーダーとするチーム医療が展開されていますが、精神医学と腫瘍学の両面を橋渡しできる筆頭は心療内科医に他なりません。

 

私は、がんの予防や早期発見にはそれなりの実績を挙げてきましたが、進行がんや末期がんの患者さんやそのご家族のケアについては、あまり積極的ではありませんでした。

 

私は、心療内科の指導医であって登録医や専門医以上に深く広い見識と経験を持ってしかるべきであるのに、甚だ不勉強であり、心得違いをしていました。

 

私の友人でウィーンのフランクル研究所の臨床心理士、Harald Mori氏も精神腫瘍学を専門としていることを思いだしました。

 

彼と何時間もディスカッションしていながら、ついに精神腫瘍学については話題にしなかったことは、とてももったいないことをしていたことに気づきました。

 

今度、ウィーンに研修に行ったときにはHaraldと精神腫瘍学の臨床についてディスカッションしたいと考えています。

 

現在、日本人の2人に1人はがんに罹ります。

 

 

14日の音楽祭の第3部で、出演者の管楽器奏者の早川潔さんが、自ら体験した腎臓がん、膀胱がんについてトークをしてくださいました。

 

その発見のいずれも高円寺南診療所(当時)が関わっていました。

 

現在の杉並国際クリニックでがん治療を直接実施することはほとんどありませんが、がん発見の機会は今後も増え続けることでしょう。

 

早川さんのように早期発見できたために、癌を根治でき、それまで以上に立派にご活躍されている方に感謝されると医師冥利に尽きます。

 

しかし、実際には、初診時にはすでに進行がんだった、というケースも少なくありませんでした。

 

そうした患者さんには、再検のため紹介状と共に専門医療機関を紹介してきましたが、それだけでよかったのかどうか、もう一度振り返ってみる良い機会になりました。

 

この学術講習会で、「第2主治医」という言葉が使われ始めていることを知りました。

 

がんの専門医は、局所治療の専門家です。ですから、癌患者さんの身体全体や心の問題、さらにはご家族のサポートまでを期待することは限られた施設を除けば、まだまだ難しいのが現状です。

 

がんを発見して、がん治療施設を紹介したらそれで終わりでは、あまりにも冷たい、酷な対応になってしまいます。

 

がん患者ご本人だけでなく、ご家族の支援も大切な私の務めです。

 

がん治療中の患者さんの第二主治医としての役割を、それまでの主治医が担えるような態勢を整えれば、紹介先で、明確にがんを宣告されて、ショックのあまり私の所に戻ってくる方や、その余波で人生設計も大いに狂ってしまい困惑しているご家族の相談にも乗ることができることでしょう。