第3週:消化器・肝臓病・腫瘍医学  11月11日 肝がん診療の動向

1) 肝がん診療の現状

 

肝細胞癌(肝がん)の発症の背景は、70%近くがC型肝炎ウイルス(HCV)、15%がB型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染によってひきおこされる肝炎・肝硬変を背景に発症していました。

 

ただし、最近、肝炎ウイルス陰性の肝がんが増加し、全肝がんの約20%を占めるようになりましたが、そのような症例も慢性炎症を背景に発がんします。

        

 

肝炎ウイルス感染と慢性肝炎・肝硬変・肝がんとの因果関係が明確なため、国は平成21年に肝炎対策基本法を定めました。

        

C型慢性肝炎ではインターフェロン治療によって高率に肝硬変への進展阻止・発がんの抑制が可能となり、B型肝炎ウイルスに対しては、すでに母子感染防止事業が開始され、母子感染はワクチン接種により抑制されています。B型観念ウイルスに有効な抗ウイルス剤も開発され、医療費助成が行われています。しかし、現在の抗ウイルス薬はHBVを完全に排除することは難しいため課題は解決していません。

        

一方で、血中HBs抗原もHCV抗体も陰性でアルコールの多飲歴がない肝がん症例が増加しています。このタイプは、肥満、糖尿病などを背景としていることが多く、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non-alcoholic steatohepatitis)との関連が考えられています。

        

肝がんの領域において画像診断法の進歩は著しいですが、肝がんには背景に肝硬変を有しているという特有の問題があるため、どのタイミングで治療をすべきなのか、あるいは経過観察を行うべきかという新しい課題が出てきています。

        

それでは、肝細胞癌(肝がん)は、どのようにして診断をはじめていったらよいのでしょうか?

        

<明日に続く>