11月5日 脳心血管病予防における慢性腎臓病(CKD)の考え方

2)CKD診療の夜明け前

       

慢性腎臓病(CKD)の多くは自覚症状に乏しいです。そのため、平成時代の国民の健康観《症状がなければ健康》に留まっている限り、手遅れになります。

 

しかし、CKDという国民病を正しく認識していれば、血液・尿検査で診断が可能です。しかも、わざわざCKDのためにだけ血液検査をする必要は必ずしもありません。

 

杉並国際クリニックに通院中の方であれば、概ね3カ月に一回(四季の変わり目ごと)の血液検査の結果がそのまま使用できるからです。

 

また、尿検査は、最も初歩的な試験紙法で実施しているため、非常に低コストです。

 

 

杉並国際クリニックの前身である高円寺南診療所時代にもすでに、試験紙での尿検査による初診時スクリーニングを推進していました。

 

しかし、非常に低コストであるにもかかわらず有用な検査であることを説明しても拒否される方もいらして、非常に残念な経験をしました。

 

思えば、平成の時代とは医療不信が蔓延した時代でした。前医からの紹介状なしで受診される方は、期待と信頼以上に疑念が強く、被害者意識とも相まって、後医である私を悩ませることがしばしばありました。

 

 

典型例を3例挙げてみます。

 

Case1:

他院の皮膚科から処方されたステロイド軟膏による治療で治らない全身性痒疹の患者さん(糖尿病で、その後の尿検査で糖⧻でした)や、

 

Case2:

他院の整形外科で骨折後の後療法を半年続けているが脚の浮腫みが改善しないという患者さん(高血圧とネフローゼ症候群で、その後の尿検査でタンパク⧻でした)、

 

Case3:

他院の心療内科(御多分に漏れず、実は精神科医)でうつ病が治らず抗うつ剤が増える一方なので助けてほしいという患者さん(甲状腺機能低下症:橋本病と耐糖能低下合併で、その後の尿検査で、糖⧺、タンパク+)など、その他も例を挙げればきりがありません。 

 

この3人は、すべて、初診時で尿検査を拒否された方々でした。

 

幸い、その後、信頼関係を構築し、ようやく尿検査を受けていただくことができました。その結果が診断と治療に大いに役立ち、

Case1:全身湿疹の方も、軟膏ではなく糖尿病治療で全快、Case2:むくみの方も、整形外科医から処方されていた鎮痛剤を中止し、適切な降圧剤使用でコントロール可能となり、Case3:うつ病もどきの患者さんも、甲状腺の治療によって、抗うつ薬を全廃し、見違えるほど明るい美人となりました。

 

この頃は、まだ慢性腎臓病(CKD)の概念は確立していませんでしたが、高円寺南診療所時代に以上の経験をされた方は、令和の時代を迎える前に、尿検査の重要性を身をもって学習されました。

そして、そのときからすでに10年以上先の自分たちの健康管理のために、賢明な健康行動をとっています。

 

令和時代を迎えて杉並国際クリニックで<慢性腎臓病重症度分類>シートを導入して以来、必要かつ重要なスクリーニング検査がスムーズに実施でき診療の質にも向上が図れたことは、とても喜ばしいことです。

 

        

<明日に続く>