第5週:アレルギー・膠原病・血液病 10月31日(木)関節リウマチ診療の実際

4)妊娠可能年齢での関節リウマチの治療

 

関節リウマチは妊娠可能年齢に好発します。そのため、妊娠中に使用できる薬剤を把握しておくことは非常に重要です。

 

薬剤の胎児への影響は基本的に「催奇形性(妊娠初期:14週未満)」と、発育や機能障害といった「胎児毒性(妊娠中期以降:16~27週)」の2期に分けて考える必要があります。

 

関節リウマチ治療薬の中心はメトトレキサート(MTX)ですが、この薬剤はプリン代謝を抑制することによってDNA合成を抑制することで、炎症細胞の増殖を抑制します。そのため催奇形性があり、妊婦、妊娠している可能性がある女性または授乳中の女性には禁忌となります。MTXは妊娠中の投与で、胎児に中枢神経障害、頭蓋骨異常などの障害をきたすことが明らかになっています。

 

これに対して、サラゾスルファピリジンは胎盤を通過しますが、これまでの使用経験から胎児にはほとんど影響がありません。そこで、妊娠中も安全に使用できると考えられています。

 

またブシラミンも、海外疫学データは少ないが、有害情報はなく、サラゾスルファピリジンとともに有益性投与とされています。

 

非ステロイド抗炎症薬、アセトアミノフェン、ステロイドはいずれも催奇形性はありませんが胎児毒性があるため有益性投与とされています。投与にあたっては細やかな配慮は必要であり、非ステロイド抗炎症薬は、胎児動脈管早期閉鎖の危険性が増加するため妊娠32週以降は中止します。

 

このように説明しても、挙児希望の関節リウマチの女性の不安は計り知れないくらいに大きいものであることを経験してきました。関節リウマチは自己免疫疾患の一つであるため、免疫状態に直接の影響を与える自律神経系や内分泌ホルモン系の不調やアンバランスの原因となる生活習慣の乱れや、さまざまな心理社会的ストレッサーに対してのサポートが重要です。水氣道®や聖楽療法は、こうした状況下の女性を大いに励ましてくることができたという実績があるので、更に積極的な展開を図っていきたいものです。

 

<関節リウマチ診療の実際(完)>