第3週:消化器・肝臓病・腫瘍医学 10月15日(火)エヴィデンスと工夫不足の慢性便秘症診療

2)「慢性便秘症診療ガイドライン2017年」とは?…その1

 

慢性便秘の診療は、「慢性便秘症診療ガイドライン2017年」(日本消化器病学会関連研究会、慢性便秘の診断・治療研究会、2017年)では、“便秘”の定義を、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」としています。つまり、便秘は“疾患名”でも“症状名”でもなく、“状態名”であると規定しているのです。その状態とは、「排便回数や排便量が少ないために糞便が大腸内に滞った状態」、あるいは「直腸内にある糞便を快適に排出できない状態」です。

 


今回のガイドラインでは、まず、便秘の原因として、「器質性」と「機能性」に分類します。「器質性」は「狭窄性」と「非狭窄性」に分けられます。そして、「非狭窄性」と「機能性」は、それぞれ「排便回数減少型」と「排便困難型」に分けられるという構造です。この「排便回数減少」と「排便困難」というのが、「症状」になります。


「排便回数減少」のめやすは「週3回未満の排便」、
「排便困難」とは「直腸内の糞便の排出が十分でなく残便感がある」
状態です。

 

さらに、「病態」として、「大腸通過正常型」「大腸通過遅延型」「便排出障害」に分けられます。しかし、わが国では、保険診療で大腸   通過時間の測定を行うことができないので、この病態分類を有効活用できないという問題点があります。
「大腸通過正常型」は、排便回数や排便量が少なく、主な原因は食物繊維摂取不足です。そのため、適正に食物繊維をとること(目標は1日に18~20g)で改善することが多く、生活指導が重要になります。


「大腸通過遅延型」「便排出障害」では、食物繊維の摂取量を増やしても改善しないことが多いため、適切な下剤等の投与が必要になります。

 


 <明日に続く>