第2週:循環器・腎臓病 10月10日(木) 脳心血管病予防のための血圧管理(管理目標を中心に)

4) 二次性高血圧のスクリーニング高齢者の降圧目標

 

高血圧は正確な血圧値を診断し、高血圧基準を参照して評価すれば診断が可能です。しかし、ほぼ同程度の血圧値であっても、高血圧の原因によって臨床的な意義が大きく異なることがあります。つまり、高血圧の評価は、血圧値という数量のみではなく、質的な吟味が必要になってきます。

 

特に注意喚起が必要な高血圧として、二次性高血圧があります。高血圧の質的評価のためには、この二次性高血圧のスクリーニングが必要です。治療を試みてもなかなか高血圧がコントロールできないケースを治療抵抗性高血圧といいますが、その場合は、精査して何らかの二次性高血圧に該当していないかどうかを鑑別しておかなければなりません。

 

以下に、比較的頻度が高い二次性高血圧を列挙してみます。

 

 

(1) 原発性アルドステロン症

これは、若年者高血圧に多く見られ、Ⅱ度以上の高血圧もしくは低カリウム血漿などの特徴を有します。ですから、若年者、中等症以上の高血圧、治療抵抗性高血圧、低カリウム血症のいずれかがみられる場合は、血漿アルドステロンとレニン活性を測定します。専門的には血漿アルドステロンとレニン活性との比率で診断することができます。

 

(2) 腎実質性高血圧
慢性腎臓病(CKD)に関連する高血圧です。これにはCKDが高血圧の主原因(腎実質性高血圧)の場合と、高血圧とCKDが併存している場合の二つのタイプがあります。ただし、臨床的には、いずれのタイプもCKD合併高血圧として対応します。

 

(3) 腎血管性高血圧

腎血管の形態的異常や機能的な異常が原因となっている高血圧です。腎臓エックス線検査やドプラー法を含めた腎臓超音波検査までは、杉並国際クリニックで実施可能ですが、より詳しい腎血管の形態学的検査としてCTアンギオグラフィや機能的な検査として腎レノグラム等を必要とするときには、検査実施可能な医療機関に紹介することになります。

 

(4) その他の二次性高血圧

その他にも多数の二次性高血圧がありますが、当クリニックでしばしば経験するのは、睡眠時無呼吸症候群に伴う高血圧と薬物の副作用としての高血圧です。

 

治療抵抗性高血圧の中で比較的頻度が高く、最近増加傾向にあるとの印象をもっているのが睡眠時無呼吸症候群です。いびき、肥満、昼間の眠気ならびに早朝・夜間高血圧等が検査をするきっかけとなります。ただし、正確な診断と重症度分類は、睡眠ポリグラフィ―検査を行なえる医療機関に委ねます。

 

多くの二次性高血圧の診断でカギとなるのは問診です。とくに基本となるのは薬物使用歴です。漢方専門医の一人として、日頃注意しているのは、甘草を含む漢方薬です。また、他の整形外科を受診者にしばしば見出されるのは、非ステロイド性抗炎症薬による高血圧です。また、最近とみに増えてきていると感じられるのは、健康補助食品による偽アルドステロン症です。医師から処方された薬剤に対する不信感の強い方で、サプリ付けの方が見出されますが、そうした方々の中に、薬剤誘発性高血圧を発見することも少なくありません。

      

<明日に続く>