最新の臨床医学 7月14日(日)心療内科・統合診療科の実践

抗不安薬の特徴

 

抗不安薬と睡眠薬は、異なる薬に思われていますが、これらの薬のいずれもが、実はほとんどベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬という同一カテゴリーにいます。
これらの化合物の中で抗不安効果のより強いものが抗不安薬、催眠効果の強いものが睡眠薬と呼ばれています。
 

 

ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬は情動と関係する大脳辺縁系をはじめ全身に分布する神経活動を抑制し、作用をもたらします。
 

抗不安薬は、神経症性障害を中心として基本的に不安を伴うすべての病態に適応があります。

また、アルコール離脱の予防や身体的な疾患でその発症や経過に心理的因子が密接に関連している場合、すなわちストレス関連性身体疾患や心身症に使用されます。

アルコール依存の離脱予防には、肝機能保護も同時に考慮すべきなので、ロラゼパム(ワイパックス®)を処方しています。その理由は抗不安薬のうち、ロラゼパムはP450という肝臓の酵素に関与しないので、その分、身体疾患(特に肝疾患)や、多くの身体治療を服薬している患者さんや高齢者など、あらゆるケースに使用しやすい薬剤です。

またベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬の中でも、クロナゼパム(リボトリール®)などは抗てんかん薬としても用いられています。パニック発作が強い場合や過活動型の線維筋痛症で処方しています。

 

ストレス関連性身体疾患や心身症は心療内科の専門領域であるため、私共、心療内科専門医にとって以上の抗不安薬は診療に不可欠な薬剤ということになります。
ただし、抗不安薬はベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬以外の薬剤もあります。それらを一括して非ベンゾジアゼピン系といいます。

 

まずセロトニン1A受容体作動薬タンドスピロン(セディール®)はBZD受容体作動薬とは異なり、全身に作用せず、不安、抑うつに関与する大脳辺縁系の1A受容体を中心に刺激します。

そのためBZD受容体作動薬とは異なり、筋弛緩、依存性、記憶障害などの有害事象が少なく、長期の投与や高齢者に相応しいとされます。しかし、効果発現が2週間近くかかるうえ、効き目が弱いため、即効性を期待しがちな傾向がある不安症の方には、最初の2週間のみBZD受容体作動薬を併用しなければならないことがあります。

次に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、抗不安・パニック効果があること、強迫症や社交不安症などに適応があるため、心療内科ではよく用いられます。

しかし、効果が発現するまでに3週間ほどかかることや、屯用使用には向かないため、初期にはBZD受容体作動薬を併用し、安定期に入ってからSSRIを基軸とした治療を行うことが多いです。

 

杉並国際クリニックでは、筋緊張型頭痛や肩こりの相談が多いため、あえて筋弛緩効果が強いとされるエチゾラム(デパス®)を処方することがあります。