最新の臨床医学 6月30日(日)心療内科・統合診療科の実践

睡眠障害の治療戦術(4)

 

前回までで既に

1)症状把握、

2)治療の要否判定、

3)睡眠衛生指導、

4)リスク評価、

5)各種の薬物療法

までのステップについては説明をしました。

 

薬物療法が有効であれば、維持薬物療法を計画しますが、薬物療法が無効であったり、部分寛解といって、十分満足のいく効果が期待できなかったりするときには、6)認知行動療法を導入します。

 

 

認知行動療法

原則として、薬物療法と同時に、状況が許す限り、できるだけ早期からの心理的・行動的介入が推奨されています。これが認知行動療法です。

 

認知行動療法は、不眠を長引かせてしまう生活習慣(行動パターンや睡眠に関する考え方)と身体反応(過覚醒:目覚めすぎてしまう傾向)をカウンセリングなどで修正し、不眠を改善させることを目的として行われます。

 

広義の認知行動療法の技法としては、①刺激制御法、②睡眠制限法、③漸進的筋弛緩法、④認知療法があります。①および②は行動療法、③は自律訓練法に近い関係があります。

 

1回50分のセッションを4~8回行うことで改善することが示されています。

 

特に入眠困難の改善には薬物療法よりも効果が高いと考えられています。

 

また、睡眠薬の長期服用者には減薬促進の効果が期待できます。

 

 

維持療法

認知行動療法が有効であれば、認知行動療法の維持療法を継続しながら、薬物を併用している場合には、維持薬物療法を検討します。

 

維持薬物療法をどの程度の期間継続すべきかは、患者ごとに検討します。原薬・休薬を実施する前提としては、不眠症が寛解(回復)していることが求められます。不眠症の寛解とは、不眠症状と生活の質(QOL)障害の両面が改善していることを意味します。寛解に至ってから減薬・休薬を開始するまでの間には、再燃(再発)のリスクを低減させるのに十分な期間を置くべき、とされています。

 

 

休薬トライアル

不眠症が寛解した後には、適切な時期に適切な方法で減薬し、可能であれば休薬を試みます。

 

睡眠薬の減量の方法としては、

①漸減法

②認知行動療法の併用

③補助薬物療法

④心理的サポート

以上があり、これらを適宜用います。

 

杉並国際クリニックでは、最終的には睡眠薬の減量⇒休薬⇒睡眠薬治療終了⇒睡眠衛生指導による再発防止、というプロセスを踏まえたケアを行っています。

 

睡眠薬は①漸減法を採用しますが、むしろ、これは結果であって、睡眠薬を漸減できるように、②認知行動療法の併用や④心理的サポートを行い、③補助薬物療法としては、漢方薬を効果的に用いています。