最新の臨床医学 6月18日(火)内科Ⅱ(循環器・腎臓・老年医学)

慢性腎臓病(CKD)に合併する高血圧の治療

 

高血圧は、慢性腎臓病(CKD)の発症・進展及び心血管疾患(CVD)発症の最大の危険因子で、高血圧治療はCKD診療における要です。

 

高血圧治療の要点を示します。

 

①高圧目標は130/80㎜Hg未満とする。

ただし、非糖尿病で尿蛋白陰性のCKDでは140/90mmHgを推奨する。

 

②高齢者でも同様であるが、過度な降圧は避ける。

 

③糖尿病及び尿蛋白陽性(0.15g/gCr以上、アルブミンでは30㎎/gC以上)のCKDでは、ACE阻害薬/ARBを第一選択薬とする。

 

④尿蛋白陰性の非糖尿病CKD(多くは高齢者の腎硬化症)では、病態に応じて降圧薬を選択する。

 

⑤降圧薬(特にACE阻害薬/ARB)を服用中の患者(特に高齢者)が脱水になると急性腎障害(AKI)発症の危険がある。

 

したがって、下痢・嘔吐・食欲不振など脱水の危険があるときには、これらの降圧薬を中止して速やかに受診するように患者に伝える。

 

特に尿蛋白陰性で高齢の患者や腎機能が既に低下している患者においては、Ca拮抗薬が使いやすい。

 

 

杉並国際クリニックからのコメント

慢性腎臓病(CKD)に合併する高血圧という視点からの治療指針を紹介しましたが、実際には高血圧患者の腎機能を調べてみると、そのほとんどが慢性腎臓病(CKD)に該当します。

 

特に、高齢者ではそれが顕著です。したがって、高血圧がある受診者には尿検査によって早めに慢性腎臓病(CKD)のチェックを行うことが大切であり、

 

慢性腎臓病(CKD)であれば、少なくとも、毎月1回は尿検査を実施するように心がけたいと考えています。

 

上記③で、尿蛋白陽性(0.15g/gCr以上、アルブミンでは30㎎/gC以上)のCKDとは、蛋白尿区分でA2(軽度蛋白尿)もしくはA3(高度蛋白尿)の場合に相当します。

 

そして、蛋白尿区分がA1で蛋白尿に関して正常区分であっても、糖尿病の場合は、合併する高血圧症の治療にはACE阻害薬/ARBを第一選択薬とすることが推奨され、高圧目標は130/80㎜Hg未満ということになります。

 

逆にいえば、蛋白尿区分A1(正常)で非糖尿病のケースでの合併する高血圧症の治療にはACE阻害薬/ARB以外の選択の可能性が大きくなります。

 

この区分に属する高齢者の多くは腎硬化症であり、病態に応じて降圧薬を選択することが推奨されていますが、このようなケースではCa拮抗薬が使いやすいとされるので、これを第一選択薬とするのが妥当だと考えます。

 

逆に、特に高齢者であれば、ACE阻害薬/ARBを服用して脱水になると急性腎障害(AKI)発症の危険があることから、なるべくCa拮抗薬でコントロール可能な状態を維持することが望まれます。