最新の臨床医学 6月2日(日)心療内科・統合診療科の実践

<心療内科でしばしば経験する複合精神科疾患>

 

うつ病は、いまや精神科のみならず一般の内科医が対応する必要がある精神疾患です。ましてや、心療内科医が、うつ病を診る機会は多いです。しかし、うつ病の診断と治療は必ずしも容易ではありません。精神科医ですら手をこまねいている症例が少なくないからです。そうしたうつ病の中には、背景に社交不安症が潜在するタイプがあります。その多くは、社交不安症をベースとしてう発症するうつ病です。

 

 

◆概要

社交不安症の臨床では、常に併存疾患を考えながら治療することが大切です。社交不安症の6割近くに併存精神疾患があります。とくにパニック症などの社交不安症以外の不安症、うつ病、アルコール使用障害などが多く認められるとされています。その他に、身体化といって身体症状を伴うことが多いです。この点、身体の診察に習熟している内科医である心療内科医は、こうした複雑なケースにも本領を発揮できることが多いです。

 

社交不安症はうつ病の発症の危険因子とも言われています。そして社交不安症とうつ病を併存した場合には、うつ病単独発症の場合よりも難治性であったり、再発を繰り返しやすかったりすることなどが知られています。つまり、社交不安症がうつ病の経過の増悪因子にもなるのです。

 

社交不安症だけで医療機関を受診する人は少ないです。なぜならば、そうした患者さんは、病気であるという認識を持つことが少なく、むしろ自分の性格の問題であると思い込んでいる場合が多いからだと思われます。しかし、社交不安症を発症している人がうつ病を併存し、職場等での不適応を来すようになって医療機関を受診するケースはあると思います。

 

その場合、うつ症状だけに注目してしまうと、うつ病治療自体がうまくいかなくなりがちです。社交不安症とうつ病を併存している場合には発達歴を聴取して、治療反応性や経過についての慎重な対応が求められます。そこには社交不安症の歴史や基本的な考え方があり、うつ病に潜在する社交不安症を見逃さないためのコツがあります。

 

うつ病治療においても社交不安症の存在を念頭に入れておくことは大変重要です。そのために経験豊富な臨床心理士による心理査定や、段階的な発達歴や家族関係性の聴取を含むカウンセリングが必要になってきます。