朝食を全く食べないと、毎日食べる場合よりも心血管死のリスクが高い(J Am Coll Cardiol誌2019年4月30日号)
朝食を抜くことが、心血管死や総死亡のリスク上昇と関連するかが米国で検討された。
背景:
朝食は1日の中でも重要な食事と考えられているが、朝食を抜くことの健康上の影響に関する研究は少ない。エビデンスは不十分であるが、朝食の欠食は、過体重/肥満、脂質異常症、高血圧、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、冠動脈心疾患、脳血管疾患のリスク上昇と関連することが示唆されている。
目的:
本研究では、米国の全国代表コホートで、朝食の欠食と心血管死、総死亡との関連を検討すること。
対象:
米国全国健康栄養調査(NHANES)III(1988~1994年)の参加者6550例(40~75歳、平均年齢:53.2歳[標準誤差:0.3]、48.0%が男性)
方法:
本研究では、前向きコホート研究で、朝食の摂取頻度に関する情報は面接調査で収集された。「どのくらいの頻度で朝食を食べるか?」という質問に対する回答を「全く食べない」、「たまに食べる」、「時々食べる」、「毎日食べる」の4つのカテゴリーに分類した。
心血管死を心疾患または脳血管疾患による死亡をエンドポイントとした。死亡の判定には、2011年12月31日までのNHANES III Public-Use Linked Mortality FileとNational Death Indexのデータを用いた。
朝食の摂取頻度と心血管死および総死亡との関連は、Cox比例ハザード回帰モデルで検討した。
結果:
共変量は、年齢、性別、人種/民族、婚姻状態、世帯所得、喫煙状態、飲酒、身体活動、総エネルギー摂取量、健康食指数(Healthy Eating Index-2010)による全体的な食事の質、BMI、高血圧、糖尿病、脂質異常症だった。
6550例のうち、朝食を全く食べないと回答した参加者は5.1%(336例)、たまに食べる参加者は10.9%(713例)、時々食べる参加者は25.0%(1639例)、毎日食べる参加者は59.0%(3862例)だった。
11万2148人年の追跡期間中(追跡期間中央値:18.8年、最長追跡期間:23年)、2318例が死亡し、そのうち619例が心血管死だった。
朝食を全く食べない参加者は、心血管死のリスクが高かった。全ての共変量で補正したところ、朝食を毎日摂取している参加者と比較して、朝食を全く食べない参加者の総死亡のハザード比(HR)は1.19(95%信頼区間[95%CI]:0.99-1.42)、心血管死のHRは1.87(95%CI:1.14-3.04)だった。
また、朝食の摂食頻度と心疾患による死亡および脳卒中による死亡との関連を別々に検討した。全ての共変量で補正した結果、朝食を毎日食べる参加者と比較して、朝食を全く食べない参加者の心疾患による死亡のリスクは有意ではなかったが(HR:1.59、95%CI:0.90-2.80)、脳卒中による死亡のリスクは有意に高かった(HR:3.39、95%CI:1.40-8.24)。
考察:
先行研究と同様、今回の研究でも、心血管の健康を促進し、心血管疾患の罹患と死亡を予防する簡単な方法として朝食をとることの重要性が明白に示された。
また、朝食の欠食がどのように心血管代謝の異常を引き起こし、最終的に心血管死へとつながるのかを説明しうる機序として以下のものを挙げている。
(1)朝食の欠食は、食欲の変化や満腹感の低下と関連し、これはその後の過食とインスリン感受性の障害へとつながる可能性がある。
(2)朝食の欠食は、絶食の時間が長くなるため、視床下部-下垂体-副腎系の、ストレスとは無関係の過活動と関連し、朝の血圧上昇につながる。朝食の摂食は、血圧を低下させる助けになることが報告されており、それにより血管の閉塞、出血、心血管イベントが予防される可能性がある。
(3)朝食の欠食は、例えば総コレステロールやLDLコレステロール濃度の上昇など脂質濃度の有害な変化を誘発する可能性がある。
結語:
米国の中高年集団を長期にわたって追跡した今回の前向きコホート研究により、朝食の欠食が心血管死のリスク上昇と関連することが示された。今回の結果は、心血管の健康促進において朝食をとることのベネフィットを支持するものだった。
論文:
Rong S, et al. Association of skipping breakfast with cardiovascular and all-cause mortality.J Am Coll Cardiol. 2019:73:2025-32.
杉並国際クリニックからのコメント
朝食抜きダイエットを推奨する医師もいますが、日頃、朝食摂取を進めている私には理解できない理論を展開していました。今回の米国の研究は、朝食摂取の意味をこれまで以上に明らかにしてくれました。
ARCHIVE
- 2025年3月
- 2025年1月
- 2024年12月
- 2024年11月
- 2024年10月
- 2024年9月
- 2024年8月
- 2024年7月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年9月
- 2023年7月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年9月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年7月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月