最新の臨床医学 5月19日(日)心療内科・統合診療科の実践

<今月の論点:リウマチ膠原病診療の盲点―心療内科指導医・専門医 兼 リウマチ専門医 の立場からー>

 

③NPSLEの類型について

米国リウマチ学会によるNPSLEの分類は、出現する精神症状は以下の4つの主要症候群に分類しています。①認知障害(せん妄および認知症)、②精神病性障害、③気分障害、④不安障害です。

 

次のステップの「病因診断」はSLE患者では苦慮することが多いとされます。

 

その理由は、

①NPSLEはSLE以外の要因による精神障害(例:ステロイド精神障害)と症候学的に区別不能

 

②NPSLEには診断に有用な疾患特異的な単一の指標がない

 

③SLEの全身性の疾患活動性と連動せずに症状が出現することがある

 

そこで、必要になるのはNPSLE以外の要因を除外することが重要であると、西村先生は指摘しています。このあたりが、精神科医の仕事と言いたいところなのでしょうが、優秀な精神科医でも困難極まりない仕事だと考えます。

 

なぜなら実際の診断は、総合的に行わざるをえないからです。すなわち、臨床症状、血液および髄液検査所見、脳波、脳イメージング、免疫学的マーカーなどが判断材料になります。

 

たとえば、脳波の特徴としては半数以上に全般性除波化が観察されます。また、SLEをはじめとする膠原病では自己抗体が産生されます。この自己抗体が脳血液関門(BBB)を通過し、神経細胞やグリア細胞に結合すると精神障害をきたしやすくなります。脳血液関門(BBB)の透過性の評価にはQ-albumin(髄液と血清のalbumin比)が用いられることがあります。

 

こうした総合判断を、リウマチ医と精神科医が協働して行ったとして、どれだけ整合性ある統合的結論に結びつくかははなはだ疑問です。複数の専門医が一人の患者さんの一つの病気に関与する場合は、身体症状に対するアプローチと神経精神症状に対するアプローチに対する理解を何とか総合することはできても、すっきりと一つのまとまりに統合することは、それぞれの専門医にとっても事実上不可能になります。

 

そのような難題の受容を医療の素人である患者さん自身に負わせていかなければならないことになります。心と体とがバラバラにされたままの再統合されないままの治療を余儀なくされた患者さんの苦しみは、たいていの医師の想像を超えたレベルに達しています。

 

それでも、目の前に患者さんが存在する以上、何らかの有効な現実的手立てが求められることになります。