最新の臨床医学 5月15日(水)内科Ⅲ(糖尿病・内分泌・血液・神経)

糖尿病は病型にかかわらず、膵β細胞の休息を!

 

 

第116回日本内科学会総会・講演会(ポートメッセ名古屋)

第3日目

2019年4月28日(日)

 

教育講演13<1型糖尿病の病態と治療の最前線>

 

1型糖尿病:

膵β細胞の破壊により発症し、通常はインスリンの絶対的欠乏に至る糖尿病

 

発症因子:

他因子疾患。遺伝的素因を有する人に何らかの環境因子が働いて発症

 

遺伝的素因:

HLA。DR4およびDR9が感受性、

まれにDR8ハプロタイプ(強い疾患感受性、疾患の家族集積)

DR2が抵抗性。

 

成因による分類:

自己免疫性および特発性

 

日常臨床経過による分類:

劇症、急性発症および緩徐進行

高血糖症状出現からインスリン依存状態に至る期間が基準

急性発症1型糖尿病では3カ月以内:内因性インスリン欠乏    or 膵島関連自己抗体陽性

正常なインスリン分泌パタンが喪失

内因性インスリンは自己調節能を有するので投与インスリンの過不足をも緩衝

 

β細胞の病態による分類:

完全廃絶群、微小残存群

 

最近のトピック:

発症の環境因子として、他疾患に対する免疫療法により自己免疫を増強させると、膵β細胞障害を促進。インターフェロン療法や免疫チェックポイント阻害薬治療に伴って発症することが示唆。とくに癌の免疫チェックポイント阻害薬に伴って発症する1型糖尿病には、高率に劇症1型糖尿病が発症。劇症1型糖尿病は、発症時から膵β細胞が完全に廃絶してしまうので対応の遅れにより生命危機に直結。

 

 

治療:

インスリンポンプ(ASI)によるインスリン補充

内因性インスリン完全廃絶例でのコントロールは対応困難

残存β細胞を如何に温存させるかが重要

細胞性免疫によるβ細胞破壊を防ぐためには、

クリティカルなβ細胞の残存率は10~20%、

それ以下ではケトアシドーシスを発症し、インスリン依存状態に至る

初期治療によって、残存膵β細胞を休息させる

 

 

ポイント:

インスリンは膵臓に点在するランゲルハンス島組織を構成する細胞の一種であるβ細胞で産生され、分泌されています。

 

日本人のβ細胞は、とてもデリケートで、欧米人と比較して簡単に疲弊し、機能廃絶(インスリン産生不能)に陥りがちであることが知られています。

 

糖尿病の大多数を占める生活習慣病としての2型糖尿病ばかりでなく1型糖尿病であっても残存膵β細胞を休息させることが大切です。