最新の臨床医学 5月1日(水)内科Ⅲ(糖尿病・内分泌・血液・神経)

 糖尿病の治療は、血糖値を下げるだけでは不十分!

 

-2型糖尿病では患者さんの病態を見極め、それに見合った薬剤を選択する必要ありー

 

一口に糖尿病といっても様々なタイプがります。多くは生活習慣病として認識されている2型糖尿病ですが、現在までに多くの種類の糖尿病治療薬が開発され、実際に処方されています。単に血糖値を下げることだけが目的であれば、どの薬剤を使用しても良いことになります。実際に、日本糖尿病学会は、糖尿病の第一選択薬は特定せずに主治医の判断に任せる立場をとっています。

 

ところで、日本人の膵臓のβ細胞(インスリン分泌細胞)は欧米人に比べて脆弱であることがずいぶん以前から指摘されています。そのため、日本人では糖尿病の初期から機能低下がはじまり、やがてインスリンを分泌できなくなりがちです。

 

つまり、糖尿病の患者さんの膵β細胞機能をいかに温存させるかを考えた処方が必要です。この膵β細胞の保護のためには、この細胞を疲弊させない薬剤を選択することが必要となります。

 

そこで2型糖尿病を診る際には、病態を見極めることが大切になってきます。残念ながら、他院から病態にそぐわない薬を長期間処方されてきた皆様に別の病気の初診で遭遇することが少なくありません。

 

処方するのは医師ですから、決して患者さんの落ち度ではありません。そして、現在の日本糖尿病学会の指針によれば、必ずしもそうした処方医を責めるべきではないでしょう。

 

 

そこで、糖尿病の皆様に、お勧めしたいのは、処方してくださる先生に、以下のように率直に尋ねてみることです。

 

「私の糖尿病はインスリン分泌が不十分なタイプなのですか、それともインスリンが働きにくいタイプなのですか?」

 

あなたのこの問いかけに対して、診療データとともに笑顔ではっきりと答えてくれるようなドクターの処方薬であれば、まず安心してよいといえるでしょう。

 

 

このように、2型糖尿病の場合の薬の使い分けの基本は、病態を把握しておくことが前提となります。インスリン分泌促進薬か、インスリン抵抗性改善薬か、その選択が糖尿病の薬物療法を開始するにあたっての鍵になるからです。

 

杉並国際クリニックでは、以上のことを踏まえて、糖尿病の薬物療法開始の際には、これまで以上に丁寧な病態評価方法を開始して行く予定です。

 

インスリン抵抗性の指標としてHOMA-R([空腹時血糖値×空腹時インスリン値]/405

が用いられています。

この値が2.0以上であればインスリン抵抗性があると解釈し、薬物療法が必要であれば、インスリン抵抗性改善薬を処法します。

 

ただし、この方法には限界があります。空腹時血糖が140㎎/dLを超えるとデータの信頼性が確保できないからです。その場合は、体型やそのほかの検査所見(たとえば中性脂肪高値、あるいは高インスリン血症であれば、インスリン抵抗性が疑われます)から病態の鑑別を試みなくてはならないからです。つまり、初診時において軽度の糖尿病であれば有用な指標となりえるのですが、中等度以上の糖尿病の病態鑑別は、より複雑で難しくなるといえるでしょう。インスリン分泌低下が併存してくれば、スルフォニル尿素(SU)薬を併用したり、さらにインスリン注射を必要としたりする段階に至ることも少なくありません。