不整脈の治療法は、近年大きく変化しています。
不整脈の種類によっては植込み式除細動器(ICD)や高周波カテーテルアブレーションなどの非薬物療法の有効性が薬物療法を上回ることが示されています。そうして、不整脈の薬物療法は、自覚症状の軽減や非薬物療法を補完する役割が主となってきました。抗不整脈薬は不整脈そのものよりも基礎疾患や心不全、その他の合併症の有無が重要視されるようになり、それに応じた治療目標が立てられるようになってきました。
最近の不整脈関連の学会の動向では、心房細動の心拍数調節の基準や、カテーテルアブレーション治療が議論されています。そこで、心房細動について実際にお受けした質問について回答数することにしました。
Q3
心房細動になるメカニズムについて教えてください。
杉並国際クリニックからの回答
心房細動は、遺伝的素因および後天的素因が複合して発症する病気です。
家族歴はリスク因子として報告されています。片親が心房細動を有する場合のリスクは1.85倍、両親共に心房細動を有する場合のリスクは3.23倍です。
後天的素因としては、心房筋の線維化等を主体とする心房リモデリングは、高血圧等の基礎疾患に伴い、心房細動発症前から進んでいると考えられています。
また、心房細動の約40%は無症候性、つまり自覚症状を伴わないため治療対象と認識されないケースが多く、脳梗塞を初発症状として発見される場合があります。
心房細動になるメカニズムについてのご質問は、メカニズムを知ることによって予防策を講じたいというお考えだと思います。予防のためには、後天的素因について理解しておくことが有用だと思います。後天的素因として中核に挙げられるのは心房のリモデリング(再構築)です。
多くの研究が示しているのは、心房細動のリスク因子が心房リモデリングを促進し、心房細動基質を増加させているという結果です。
心房リモデリングに影響を与える因子として、心房炎症によるサイトカイン産生、レニン・アンジオテンシン系の亢進、酸化ストレス、マイクロRNAの発現変化、主要増殖因子TGF-βシグナルの活性化等があり、それらが複合的に関与しています。
心房リモデリングは、心筋のイオンチャンネルの変化に代表される電気的リモデリングおよび心筋組織の線維化に代表される構造的リモデリングに分けられます。
そして、いずれのリモデリングも心房での伝導遅延を生じさせ、リエントリーを持続させることになります。
リエントリーとは、病的な心臓では,自律的な電気回路が心筋組織の一部分に新たに形成され,そこを異常な興奮がくり返し旋回することです。正常な心臓では,洞房結節で発生した歩調取電位が刺激伝導系を順次伝播し心臓全体の同期した収縮をひき起こします。
心房細動になるメカニズムを簡単にまとめると、そもそも電気的な興奮の伝導によって収縮を引き起こす心臓において、さまざまな素因に基づき心房が形の面からも働きの面からも変性するリモデリングが生じることによって、電気的興奮の伝達遅延が生じることによる、と説明することができます。
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