新の臨床医学 4月7日(日)心療内科

心療内科医は絶滅危惧種か?その1

 

今月は、内部からでさえ、もはや絶滅危惧種と叫ばれつつある心療内科が如何に誤解されているか、混乱させられているか、という深刻問題点について考えてみたいと思います。すでに世間に広く広報されている具体的な声を題材にしました。

 

 

第1回:患者の誤解(あなたは心療内科の患者様ですか?)

 

そのままコピーできないので、若干短縮し編集の手を加えました。

 

原文は、上記出典を検索してください。

 

 

読売新聞 オンライン 発言小町

 

タイトル「心療内科で傷つきました」2018年10月12日 17:50

5年ほど前から適応障害とうつ状態と診断され心療内科(病院A)に通院

この2~3ヶ月、気分の落ち込みも減り、そろそろ投薬を減らしたいと思い始めた。

先生の問診時間は2~3分と短く、②カウンセリングの時間も減らされたり、③いつもの担当の方が辞めたりと、なかなか自分の気持ちを上手く伝えられずモヤモヤしたことが続いていた。

(病院Aはカウンセリングと診察は担当者が別。)

 

 そこで心療内科もある総合病院(病院B)を受診。
 私が「病院Aではカウンセリングの時間を減らされてしまって…」と話をすると、

担当の医師から鼻で笑うように「え?うちだってカウンセリングなんて5分だけど?

長く話したいなら他所行って」と話し始めてすぐにガツンと言われ、堪らず泣いてしまった。

 

その医師曰く「うつ状態になっている原因は他の体調不良によるものかも知れないし、検査はしてみた方がいい」と言われたのと、ここひと月ほど風邪が治らなくてしんどかったので、今日は血液検査と胸部CTを撮りました。

 

結局今日は精神系の処方はされずに風邪薬だけでした。

結果を聞きに1週間後行かなくてはいけないのですが、正直行きたくありません。

また収まりかけてた不安な気持ちが復活して辛いです。

病院Aに戻すべきか、それともBに通うのがいいのか、もうごちゃごちゃしてます。

 

この投稿者に共感されるような方に参考にしていただきたいメッセージを豊中市の精神科クリニックのホームページから見つけましたので貼り付けます。

 

医療法人 秀明会 心療内科・精神科 杉浦こころのクリニック

 

理事長・院長の杉浦正義先生は、近畿大学医学部御出身の精神科指導医です。

 

 

 

心療内科とカウンセリングの違い

近年はメンタルのヘルス問題が深刻化していて、うつ病になる方も増えています。そういった中で、心療内科に行こうかカウンセリングに行こうか迷っている方も多いと思います。

 

心療内科の診察をカウンセリングと呼んでいる方もいますし、医師にカウンセリングを要求される方もいます。ハッキリと診察とカウンセリングを分けることが難しいポイントもありますが、どちらがよいというわけでなく、それぞれ特徴の違うものですので、医師とカウンセラー(臨床心理士)の役割を理解してもらう意味で説明したいと思います。

 

まず、心療内科・精神科などの医師は、精神的に困っている患者様に対して、こころの病気の背景としての心理・社会的要因を含めて、身体に現れる症状も考えて診断し、「病気を治療する」という医療的な視点での薬物療法や精神療法がアプローチの中心となります。もちろん、一人ひとりの気持ちを聞いて理解することも大事ですが、保険診療であることから考えてどうしても一人当たりに割ける時間は短くなってしまうので、ゆっくり話を聞くことに限界があります。症状が辛い状態で、生活に支障が出ている場合などは、お薬の治療を行わないと改善が難しいこともあります。

 

一方で、臨床心理士は長い時間をかけて(1回50分程度)、一人ひとりの気持ちを受容、共感、傾聴することを一番に重視しています。カウンセリングでは、自分の感情を表現したり、自分の問題をカウンセラーと一緒に考えたりすることで、気持ちが楽になって、自分がどうしたらよいのか、自分がやりたいことは何なのかなど、自己理解が深まり解決方法が見つかっていくと思います。「病気を治す」ということも目標の一つになりますが、病気ではなくても悩みや話したいテーマがあれば、それはカウンセリングの大事な目的になります。ですから、「カウンセリング」=「精神的な病気の人が受けるもの」という感覚は間違いです。カウンセリングでは、相談者のことを「患者」ではなく、「クライエント(依頼者)」と呼びます。

 

このように、カウンセリングと医療では視点が異なる点があります。医療機関での治療を長期間続けてもなかなかよくならないという場合には、異なる視点でのアプローチとしてカウンセリングを考えてみるのも大事な選択肢だと思います。薬物での治療とカウンセリングを平行して行うことがもっとも治療に適しているというデータもあります。どちらを受けることが正しいということは自分で判断することが難しく、迷うこともあるかもしれませんが、カウンセラーがお薬の治療も平行して行う必要があると判断した場合には、医療機関をご紹介することも可能です。

 

自分一人で悩むことに限界を感じたら、気軽に心療内科などメンタルヘルスの専門機関のサポートを受けてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

<杉並国際クリニックの立場から>

精神科医の杉浦先生のメッセージは、いろいろな意味で示唆に富むものであるといえます。しかし、文末の結語を<自分一人で悩むことに限界を感じたら、気軽に心療内科などメンタルヘルスの専門機関のサポートを受けてみてはいかがでしょうか?>などと平気で書かれてしまうと、世間の混乱を増幅させてしまうので残念です。

 

精神科医であって、しかも精神神経科の指導医である方が、心療内科を標榜されることはご自由ですが、少なくとも、精神科と心療内科の違いをしっかり患者さんに説明していただかないと、患者さんばかりでなく心療内科専門医も非常に迷惑をいたします。<自分一人で悩むことに限界を感じたら、気軽に精神科などメンタルヘルスの専門機関のサポートを受けてみてはいかがでしょうか?>と訂正していただきたいものです。

 

そもそも、冒頭のキーワード・キーフレーズの流れにも問題があります。

 

メンタルヘルス⇒うつ病⇒心療内科に行こうかカウンセリングに行こうか迷っている方、このような方には、<カウンセリングに行かないのであれば、心療内科ではなく精神科を受診してください>とアドヴァイスすることが精神神経科指導医のお立場であるはずです。

 

<心療内科の診察をカウンセリングと呼んでいる方もいますし、医師にカウンセリングを要求される方もいます。>こうした誤解を増幅させ社会問題化のきっかけを作ったのが、他ならぬ精神科の先生方であるということを深く認識していただきたいものです。<心療内科の診察は身体の診察から始まるので、最初からカウンセリングを希望するのであれば、まずは精神科をご受診ください。>のようになぜ明確に書いてくださらないのでしょうか。

 

 

読売新聞 オンライン 発言小町

タイトル「心療内科で傷つきました」

 

読売新聞にも失望しました。この記事はタイトルからして誤解しています。

本来であればタイトルは精神科で傷つきました」

と訂正されるべきです。

 

投稿者には責任はありませんが、読売新聞の社会的責任は極めて重く、医療を意図的に混乱させいると批判されても仕方がないくらい悪質であるといわざるを得ません。

 

私は精神神経科指導医・専門医である杉浦正義先生とは全く面識がありませんし、個人攻撃をする意図は全くありません。むしろ、解り易い典型的な精神科医の思考法・表現法のサンプルを提示していただけたことに感謝している位です。ただ、どうしても心療内科指導医・専門医の立場から、ただしておかなければならないことを述べておきます。

 

<心療内科・精神科などの医師は、精神的に困っている患者様に対して、こころの病気の背景としての心理・社会的要因を含めて、身体に現れる症状も考えて診断し、「病気を治療する」という医療的な視点での薬物療法や精神療法がアプローチの中心となります。>この文章は、心療内科医と精神科医の役割の違いを非常にあいまいにしています。

 

精神科などの医師は、精神的に困っている患者様に対して、こころの病気の背景としての心理・社会的要因を含めて、身体に現れる症状も考えて診断し、「病気を治療する」という医療的な視点での薬物療法や精神療法がアプローチの中心となります。>と主語を精神科に限定するなら問題はありません。

 

そのかわり、心療内科を主語とするのであれば <心療内科などの医師は、精神的に困っている身体疾患に悩む患者様に対して、からだの病気の背景としての心理・社会的要因を含めて、身体に現れる症状の背景をも考えて診断し、「病気を治療する」という医療的な視点での薬物療法や心身医学療法がアプローチの中心となります。>のように、心療内科指導医・専門医の立場から添削させていただきます。