最新の臨床医学 4月3日(水)内科Ⅲ

 

糖尿病はもはや国民病です。糖尿病専門医だけに任せておけばよい病気ではありません。

薬物療法の発展は目覚ましいのですが、食事療法、運動療法、生活習慣編世用のための行動療法を駆使して治療に当たるのでなければ、コントロールに至ることは難しいです。

 

糖尿病は動脈硬化性疾患とならんで臨床栄養学の中では中心的な病態です。私は、糖尿病専門医ではありませんが、生活習慣指導、食事療法、運動療法、認知行動療法など集学的な診療体制を構築して、口頭のみではなく実際に体験していただく経験を積み重ねてきました。

薬の処方ばかりに終始しているタイプの糖尿病専門医よりは、糖尿病の外来診療について深くかかわり、実践してきたという自負があります。

私は、昭和学院短期大学のヘルスケア栄養学科で、臨床栄養学を担当していたことがありますが、「臨床栄養学」の教科書を2冊出版して、改訂を重ねています。どうぞご参考になさってください。

 

 

妊娠可能年代の女性の糖尿病治療

 

今年成人式を迎えたばかりの私の娘Bをもつ母親Aさんからの相談例

 

Q 

Bは、最近、2型糖尿病の診断を受けました。主治医から、食事療法と運動療法だけでは不十分なので薬物療法を勧められましたが、私がお断りしたところ、転医を促されてしまいました。Bは一人娘なので養子を迎えて家業を後継する大切な娘なので、糖尿病のお薬をはじめたら母子に悪影響があると聞いて心配です。どうしたらよいでしょうか?

 

A 

娘さんのBさんは、すでに立派に成人されて、専門学校を卒業して今春、就職とのことを承りました。おめでとうございます。すでに立派に成人されているのですから、今後は、是非ご本人の意志を尊重し、自主的な健康管理の習慣を獲得できるように御支援ください。

 

とはいえ、相手の先生との信頼関係がこじれてしまってBさん自身が引き続き通院がむずかしいというのでしたら、Bさんご自身に新しい医療機関を受診されることをお勧めください。その際にも、<診療状況提供書>は必要です。たとえ気まずくてもこれまでお世話になっていた先生からの情報は不可欠です。

 

Bさんの身長が156㎝、体重が86㎏ということですので、体格係数(BMI)を算定してみますとBMI=86÷1.56÷1.56=35.3

  

BMIは25以上で肥満度Ⅰ、30以上で肥満度Ⅱ、35を超えると肥満度はⅢということになり、高度な肥満であることがわかります。

   

正確なことは、情報不足なので申し上げられませんが、主治医の先生が食事療法と運動療法だけでは不十分であると判断されたのは無理からぬことであるように思われます。

   

たしかに、糖尿病治療薬の中には妊婦への投与がありますが、Bさんはすぐにご出産の予定でなければ問題はありません。もし、ご結婚等が予定されているなど妊娠可能性がある場合は、なるべく妊婦や授乳婦への影響が少ない治療薬を開始することをお勧めします。

 

 

妊娠前として望ましい血糖管理

糖尿病を持つ女性が妊娠を希望する場合は、事前に血糖を十分に管理した上で計画的に妊娠することが望ましいです。

 

妊娠前の血糖コントロールはHbA1c7.0%未満を管理目標にしてください。

 

今後、妊娠・出産を考えるのであれば、今からきちんと糖尿病の治療を行い(具体的にはバランスのよい食事・運動と、必要な場合糖尿病治療薬の使用を考慮する)HbA1c<7.0%未満にしておきましょう。

 

また糖尿病には特有な合併症があるので、注意しなければなりません。糖尿病の合併症は妊娠により悪化する可能性もあるからです。

 

合併症の管理や、使用できる薬剤の相談も含め事前に担当医と相談しましょう。

 

 

妊娠と薬物療法

妊娠前~妊娠中、出産後の授乳期の治療にはインスリンの治療を行います。糖尿病の飲み薬やインスリン以外の注射製剤を使用している方は、原則インスリンへの切り替えが必要です。インスリンの中でも、妊娠中の使用の安全性がほぼ確立しているものがあるので、そうしたインスリンを選択することになるでしょう。また、インスリンポンプや持続血糖測定器を使用して、血糖値を詳細に確認しながら細やかな血糖管理を行うことがあります。

 

Bさんは、まだ20歳なのですから、十分な時間があるので、計画的な減量をはじめ、きちんとした糖尿病管理を継続することをお勧めします。

 

ジョギングをはじめて膝関節を痛めた、と伺いましたが、水氣道®であれば、水の浮力を活用することができるので、関節を十分に保護しながら有酸素運動を続けることができます。妊娠中も継続可能な数少ない安全なエクササイズであることも、是非、Bさんにお伝えくださいますように。