最新の臨床医学 3月28日(木)骨粗鬆症についてQ&A

ここで掲載する内容は、公益財団法人 骨粗鬆症財団のホームページから引用したものです。骨粗鬆症についてわかりやすい解説をしています。

 

HPで確認することができます

 

骨粗鬆症は、長年の生活習慣などにより骨がスカスカになって骨折しやすくなる病気です。最初は、自覚症状はありませんが、ひどくなると骨折を起こし、寝たきりの原因となる場合もあります。多くは腰や背中に痛みが生じて医師の診察を受けてからみつかります。しかし、骨粗鬆症になってから治すのはたいへんです。骨粗鬆症にならないように、日ごろから予防を心がけることが大切です。骨粗鬆症を予防することが、ほとんどの生活習慣病を予防することにつながります。そのために、高円寺南診療所では女性では、45歳以上、男性でも50歳以上の皆様に骨量計測を推奨し、骨年齢を算出し、骨粗鬆症の早期発見、早期対応に力を注いでいます。それでは、骨粗鬆症についてもっと詳しく勉強していきましょう。

 

私は、昭和学院短期大学のヘルスケア栄養学科で、臨床栄養学を担当していたことがありますが、「臨床栄養学」の教科書を2冊出版して、改訂を重ねています。どうぞご参考になさってください。

 

 

それぞれのQ&Aのあとに【杉並国際クリニックからのコメント】を加えました。

 

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Q11

妊娠中の食生活について

 

いとこが妊娠しているのですが、つわりで気分が悪いため、食事が偏ってしまうようです。妊娠中は、子供にカルシウムが移行するので骨粗鬆症になりやすく、食生活で予防した方が良いときいたのですが、どんな食事を勧めれば良いのでしょうか

 

A

新生児の体内のカルシウム総量は約30gで、これは臍帯を通じて母体から胎児に移行したものです。

「日本人の食事摂取基準(2005年版)」では、妊娠・授乳中には700mg/日のカルシウム摂取が勧められています。20~39歳の女性のカルシウム摂取量は476mg/日しかありませんので、毎日の食事から十分な量のカルシウムを摂取する必要があります。食事からとれない場合は牛乳やバター・チーズなどの乳製品の利用を考えましょう。

 

ところで、「現在つわりが発現している」とのことですが、つわりは多くの妊婦(約 90%)が経験する症状で、おおよそ妊娠14~16週には消失し、その後少しずつ食欲が高まってきます。つわりの最中は食欲低下が生じることが多いため、無理をしないで、食べたいものを食べることが大切です。

 

妊娠期の栄養管理は、骨だけでなく、母胎や胎児の健康管理の面からもたいへん重要です。つわりの症状が軽減してきたら、体重管理などに注意を払いながら、不足しがちなカルシウムや鉄をはじめとする栄養素等の摂取に努めてください。

 

【つわりの際の健康管理のポイント】

1.起床時や空腹時には簡単に食べられる食品を用意しておく。

2.脂っこいものや刺激の強いものは避ける。

3.食欲がない場合には、酸味のあるもの、冷たいものを利用する。

4.水分の補給を行う。

5.便秘にならないように気をつける。野菜、果物、いも類、海草類など、繊維の多いものを食べるよう心がける。

6.食事の回数を多くして、一回の食事量は少な目にする。

7.周囲の人に、つわりは正常に妊娠が進行している証拠であることを理解してもらい、両親や夫の援助を受ける。

 

 

【杉並国際クリニックからのコメント】

この質問の相談者は、ご自分自身の相談ではなく、ご自分のいとこについての相談ということです。この相談者の年齢はともかく、妊娠中のいとこのかたは、生殖可能年齢であることになりますが、高齢出産なのでしょうか。

 

このように間接的な相談内容をQ&Aに掲載することは、あまり推奨すべきではないのではないかと思います。なるべく個別具体的でかつ、小児や障害のある方等でない限り、直接的な相談に応じることが臨床家の鉄則だと思います。

 

「妊娠中は、子供にカルシウムが移行するので骨粗鬆症になりやすく、食生活で予防した方が良いときいた」とのことですが、どなたから聞いたのでしょうか。このような一般的な質問であれば、アステラス製薬のHPのQ&Aがすっきりまとまっていますので紹介しておきます。

 

骨粗鬆症Q&A

妊娠すると骨粗鬆症になりやすいのでしょうか?

 

Answer

胎内の赤ちゃんの骨を作るのに必要なカルシウムを補うために、母親の骨からカルシウムが溶け出し、骨密度(骨量)が低くなることがあります。

 

妊娠中、赤ちゃんは胎盤をとおして母親の体から栄養をもらいます。赤ちゃんの骨が作られる時期になると、カルシウムなどの栄養がより多く必要になりますが、母親が食事からカルシウムを十分にとっていないと、母親の骨からカルシウムが溶け出してこれを補います。このような状態が続くと、母親の骨密度が減り続け、その結果、歯がもろくなったり、骨粗鬆症が起こることもあります。妊娠中はとくに、カルシウム不足にならないよう注意しましょう。

 

 つぎに、相談者が心配していることは、妊娠中のいとこが、「つわりで気分が悪いため、食事が偏ってしまう」ということのようです。相談者に対して責任をもって回答するためには、相談者からさらなる情報を収集することが欠かせません。つわり、妊婦にとって生理的な生体反応であることが多いのですが、妊娠悪阻(にんしんおそ)との鑑別が大切です。妊娠悪阻はつわりが重症化した状態なので、原因と発症時期はつわりと同じです。最初は軽いつわりから始まり、徐々に症状が悪化してきて妊娠悪阻の状態になっていきます。

 

妊娠悪阻の症状は、軽度の第1期から重症の第3期までの3段階にわけられます。

 

第1期(嘔吐期)

悪心(おしん)や嘔吐がひどく、食べられません。

悪心とは吐き気を感じたり、胸がムカムカしたりする症状です。

胃の中に食べ物がないのに嘔吐するため、胃液や血液を吐いてしまいます。

食べられない、もしくは食べても吐いてしまうため、体重減少が起こってきます。

水分さえも取れないと、身体が脱水状態になるため、「口の中が乾く」「だるくて仕方がない」「頭痛やめまいがする」といった症状が出ます。

脱水状態のため、尿量が減り、尿中タンパクが陽性になります。

人によっては、便秘になることがあるようです。

 

 

第2期(腎障害期)

第1期の症状が悪化し、尿検査でケトン体が陽性になり、代謝異常による中毒症状として血圧低下が起こります。

食べ物、飲み物さえも受け付けないため、ママの身体は飢餓状態になってきます。

飢餓状態になると、人間の身体は蓄えられている脂肪を分解して生命を維持しようとします。

ケトン体は脂肪を分解する過程で作られる物質です。

ケトン体が尿中に出てくることで、飢餓状態になっていると診断されます。

第2期になると、入院が必要になることがあります。

 

 

第3期(脳障害期)

幻覚、幻聴、意識障害などの脳神経症状があらわれます。

ここまで重症になると、母体、胎児ともに危険な状態です。

妊婦を継続することで母体の生命に危険がおよぶと医師が判断した場合は、人口妊娠中絶をしなければならないケースが出てきます。

妊娠悪阻は急に第3期の症状があらわれるのではなく、第1期から第2期、第3期へと症状が重症化していきます。

しかし、早い段階で病院を受診し、医師の治療を受ければ大事に至らなくてすむケースがほとんどです。

 

 

限られた情報の中で、相談者からの質問である「どんな食事を勧めれば良いのでしょうか」に答えるためには、少なくとも相談対象である妊婦の方の医学的プロフィールに加えて、つわりの重症度などを聴き取ったうえで、個別具体的になされるべきであると思われます。