日本腎臓病学会のHPには、有益情報が満載されています。
そこで今回から、テーマは腎臓内科の慢性腎臓病(CKD)です。
「エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン2018」を紹介します。
最後に、杉並国際クリニックからのコメントを加えました。
慢性腎臓病(CKD)とは、何らかの腎障害が3ヶ月以上持続する場合と定義されています。症状が出現することはほとんどないため、永らく見落とされてきた新たな国民病であり、多くの皆様に関わってくる病気です。蛋白尿や腎機能異常(eGFRの測定)により診断されます。
慢性腎臓病のケアには栄養管理が不可欠です。具体的な推奨について理解を深めてください。
第4章 高血圧・CVD
CQ 1
高血圧患者において血圧管理はCKDの発症を抑制するか?
推奨
高血圧はCKD発症の危険因子である.高血圧患者における血圧管理はCKD発症を抑制するため, 行うよう推奨する.夜間・早朝の血圧上昇の抑制など,血圧の日内変動も考慮した管理はより有用である可能性がある C 1 .
CQ 2
高血圧を伴うCKD患者に130/80 mmHg未満への降圧療法は推奨されるか?
推奨
CVD発症抑制,ESKD進展抑制の観点から,降圧目標を検討した.
〈CKDステージG1,2〉 DM合併:130/80 mmHg未満を推奨する B 1 . DM非合併: 蛋白尿A1区分は140/90 mmHg未満を A 1 ,
A2,
3区分は130/80 mmHg未満 を推奨する C 1 .
〈CKDステージG3~5〉
DM合併:130/80 mmHg未満を提案する C 2 .
DM非合併: 蛋白尿A1区分は140/90 mmHg未満を C 2 ,
蛋白尿A2,3区分は130/80 mmHg未満を提案する C 2 .
ただし,DM合併の有無およびCKDステージにかかわらず,収縮期血圧110 mmHg未満へ降圧しないよう提案する C 2 .
CQ 3
高血圧を伴う75歳以上の高齢CKD患者に150/90 mmHg未満への降圧療法は推奨されるか?
推奨
CVD発症抑制,ESKD進展抑制の観点から,降圧目標を検討した.
〈CKDステージG1,2〉
150/90 mmHg未満に血圧を維持することを推奨する C 1 .
起立性低血圧などの有害事象がなく,忍容性があると判断されれば,140/90 mmHg未満に血圧 を維持することを推奨する C 1 .
〈CKDステージG3~5〉
CKDステージG1,2と同様の降圧目標とするよう提案する C 2 .
収縮期血圧110 mmHg未満への降圧による有益性は示されておらず,すべてのCKDステージに おいて収縮期血圧110 mmHg未満へは降圧しないよう提案する C 2 .
CQ 4 高血圧を伴うCKD患者に推奨される降圧薬は何か?
推奨 DM合併CKDのすべてのA区分およびDM非合併CKDのA2, 3区分でACE阻害薬とARBを,DM 非合併CKDのA1区分でACE阻害薬,ARB,Ca拮抗薬,サイアザイド系利尿薬を推奨する B 1 .
ただし,CKDステージG4, 5ではACE阻害薬,ARBによる腎機能悪化や高K血症に十分注意し,これらの副作用出現時には速やかに減量・中止し B 1 ,Ca拮抗薬へ変更することを推奨する C 1 .
また,75歳以上の高齢者のCKDステージG4,5では,脱水や虚血に対する脆弱性を考慮し,Ca 拮抗薬を推奨する C 1 .
CQ 5
CVDを伴うCKD患者に推奨される降圧薬は何か?
推奨
合併するCVDの種類やCKDステージにより,推奨される降圧薬やエビデンスの強さが異なる.
〈CKDステージG1~3a〉
冠動脈疾患合併:ACE阻害薬,β遮断薬,ARBを推奨する A 1 .
心不全(収縮不全:HFrEF)合併: ACE阻害薬,β遮断薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 (MRB), ARBを推奨する A 1 .
心不全(拡張不全:HFpEF)合併: ACE阻害薬,β遮断薬,MRB,ARBを提案する C 2 .
体液過剰による症状を認めた場合:利尿薬使用を提案する D なし .
脳卒中(慢性期),末梢動脈疾患:具体的な推奨は困難である D なし .
〈CKDステージG3b~5〉
冠動脈疾患合併:ACE阻害薬,ARBを提案する C 2 .
心不全(HFrEF)合併:ACE阻害薬,ARBを提案する C 2 .
心不全(HFpEF)合併:ACE阻害薬,ARBを提案する D 2 .
体液過剰による症状を認めた場合:利尿薬使用を提案する D なし .
脳卒中(慢性期),末梢動脈疾患:具体的な推奨は困難である D なし .
RA系阻害薬による腎機能悪化や高K血症に十分注意し,少量からの開始を推奨する D なし
杉並国際クリニックからのコメント
慢性腎臓病(CKD)の管理は、高血圧や心血管系疾患(CVD)の管理と一体不可分であることが示されています。年齢や慢性腎臓病(CKD)の重症度、蛋白尿の程度、糖尿病(DM)の合併の有無、心血管系合併症(CVD)の有無と種類によって、きめ細やかな対応が求められていることがわかります。上記のガイドラインを、外来診療で実践し易いように整理してみました。
CQ 1 高血圧患者において血圧管理はCKDの発症を抑制しますか?
A1:高血圧患者における血圧管理はCKD発症を抑制します。
血圧の日内変動も考慮した管理はより有用である可能性があります。
CQ 2 高血圧を伴うCKD患者に130/80 mmHg未満への降圧療法は推奨されますか?
A2:130/80 mmHg未満を推奨するのは以下の場合です。
〈CKDステージG1~5〉DM合併、DM非合併では蛋白尿A2,3区分
CQ 3 高血圧を伴う75歳以上の高齢CKD患者に150/90 mmHg未満への降圧療法は推奨されますか?
A3:150/90 mmHg未満に血圧を維持することを推奨するのは以下の場合です。〈CKDステージG1~5〉
CQ 4 高血圧を伴うCKD患者に推奨される降圧薬は何ですか?
A4:
① Ca拮抗薬が推奨されるケース
DM非合併CKDのA1区分
CKDステージG4, 5で75歳以上の高齢者、あるいはACE阻害薬,ARBによる腎機能悪化や高K血症の副作用出現時
② ACE阻害薬とARBが推奨されるケース
DM合併CKD、DM非合併CKDのすべてのA区分
CKDステージG4,5で腎機能悪化や高K血症など副作用が出現し ない場合
③サイアザイド系利尿薬が推奨されるケース
DM 非合併CKDのA1区分
CQ 5 CVDを伴うCKD患者に推奨される降圧薬は何ですか?
A5:
①ACE阻害薬、ARBが推奨されるケース
〈CKDステージG1~5〉冠動脈疾患合併、心不全(収縮不全:HFrEF)合併、心不全(拡張不全:HFpEF)合併
②β遮断薬が推奨されるケース
〈CKDステージG1~3a〉冠動脈疾患合併、心不全(収縮不全:HFrEF)合併、心不全(拡張不全:HFpEF)合併
③ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRB)が推奨されるケース
〈CKDステージG1~3a〉心不全(収縮不全:HFrEF)合併、心不全(拡張不全:HFpEF)合併
④利尿薬が推奨されるケース
〈CKDステージG1~5〉体液過剰による症状を認めた場合
⑤具体的な推奨が困難なケース
〈CKDステージG1~5〉脳卒中(慢性期),末梢動脈疾患
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