最新の臨床医学 3月13日(水)内科Ⅲ(糖尿病・内分泌・血液・神経)

糖尿病はもはや国民病です。糖尿病専門医だけに任せておけばよい病気ではありません。薬物療法の発展は目覚ましいのですが、食事療法、運動療法、生活習慣編世用のための行動療法を駆使して治療に当たるのでなければ、コントロールに至ることは難しいです。糖尿病は動脈硬化性疾患とならんで臨床栄養学の中では中心的な病態です。私は、糖尿病専門医ではありませんが、たいていの糖尿病専門医よりは、糖尿病について深くかかわり、実践してきたという自負があります。

 

私は、昭和学院短期大学のヘルスケア栄養学科で、臨床栄養学を担当していたことがありますが、「臨床栄養学」の教科書を2冊出版して、改訂を重ねています。どうぞご参考になさってください。

 

Q2-3 

糖尿病の血糖コントロールの目標はどのように設定したらよいですか?

 

 

【要点】

糖尿病の血糖コントロールの目標は、可能な限り正常な代謝状態を目指すべきです。治療開始後、早期に良好な血糖コントロールを達成し、その状態を維持することができれば、長期予後の改善が期待できます。

 

 

【 杉並国際クリニックの実地臨床からの視点 】

糖尿病の治療目標を達成する目安としての血糖コントロールの目標は、年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定します。

その理由は、血糖のコントロールを急激に、あるいは厳格に行い過ぎると、ときに重篤な低血糖、細小血管症の増悪、突然死などを起こし得るからです。

 

とりわけ、管理を寛容なものとする必要があるのは、高齢者、罹病期間が長い、重篤な併存疾患や血管合併がある、低血糖のリスクが高い、サポート体制が整っていない、などの場合です。

 

いずれにせよ糖尿病は未治療で放置すると細小血管症や大血管症などの血管障害を招きます。

 

細小血管症を抑制するためには空腹時血糖値および血糖値の平均値の指標であるHbA1cの是正が重要です。

 

大血管症を抑制するためには、以上に加えて食後高血糖の是正も必要です。

 

まずは、血糖コントロールの目標を何に置くかがポイントになります。

 

 

①血糖正常化を目指す場合:HbA1c<6.0%

細小血管症・大血管症ともに発症のリスクを低下させることができます。

適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、

薬物療法中であっても低血糖などの副作用が無く達成可能な場合

罹病期間の短い、心血管系に異常のない若年者において目標となる数値

 

(対応する血糖値:空腹時血糖値<110mg/dL)

 

 

②合併症予防を目指す場合:HbA1c<7.0%

細小血管症の出現の可能性は少ないとされます。

 

(対応する血糖値:空腹時血糖値<130mg/dL,

食後2時間血糖値<180mg/dL)

 

 

③治療強化が困難な際の目標:HbA1c<8.0%

この値を超えると網膜症のリスク増加の傾きが大きくなります。

 

(低血糖などの副作用や、虚弱高齢者や余命5年以下と推定される高齢者であるなどの理由で治療強化が難しい場合)

 

以上とは別に、妊娠に際しては厳格な血糖コントロールが必要です。

 

  

高円寺南診療所時代に基礎を完成させた水氣道は、緩徐に血糖を低下させることができるために、安全かつ効果的な有酸素運動療法です。

 

杉並国際クリニックの時代に入り、これをさらに発展させて、現在の水氣道会員の中から多くの水氣道指導者を誕生させることによって、インスリンその他、血糖降下薬になるべく頼らないで済む糖尿病管理の、より確かなメソッドを確立させたいと願っています。