最新の臨床医学 2月27日(水)内科Ⅲ

糖尿病はもはや国民病です。糖尿病専門医だけに任せておけばよい病気ではありません。薬物療法の発展は目覚ましいのですが、食事療法、運動療法、生活習慣編世用のための行動療法を駆使して治療に当たるのでなければ、コントロールに至ることは難しいです。

 

糖尿病は動脈硬化性疾患とならんで臨床栄養学の中では中心的な病態です。私は、糖尿病専門医ではありませんが、たいていの糖尿病専門医よりは、糖尿病について深くかかわり、実践してきたという自負があります。

 

私は、昭和学院短期大学のヘルスケア栄養学科で、臨床栄養学を担当していたことがありますが、「臨床栄養学」の教科書を2冊出版して、改訂を重ねています。どうぞご参考になさってください。

 

 

Q2-2 

糖尿病の基本的治療方針はどう考えるべきですか?

 

【要点】

 

●糖尿病の基本的治療方針は、糖尿病の病型、病態、年齢、代謝障害や合併症の程度などにより異なります。

 

 

●インスリン治療の適応

 

①インスリン依存状態

 

②インスリン非依存状態においても、

1)妊娠時、全身管理が必要な外科手術、重篤な感染症の際

 

2)経口血糖降下薬やGLP-1(glucagon-like peptide 1)受容体作動薬によっても目標の血糖コントロールが得られない場合

 

 

●インスリン非依存状態での治療方針

 

十分な食事療法、運動療法を2~3カ月間行っても良好な血糖コントロールが得られない場合:経口血糖降下薬やGLP-1受容体作動薬により治療します。ただし、代謝障害の程度によっては、食事療法、運動療法に加えて、最初から経口血糖降下薬やインスリンなどの薬物療法を開始します。

 

糖尿病は慢性疾患であり、合併症の発症、増悪を防ぐには、継続的治療が必須です。チーム医療による糖尿病教育は糖尿病治療の根幹を成すものです。

 

 

【 杉並国際クリニックの実地臨床からの視点 】

糖尿病でインスリン治療が直ちに必要なのは、まず

①インスリン依存状態です。多くの1型糖尿病はこの状態にあります。

 

② インスリン非依存状態にある2型糖尿病でも、代謝障害が中等度以上(随時血糖値250~300mg/dL程度またはそれ以上)であれば、食事療法、運動療法に加えて、最初から経口血糖降下薬やインスリンやGLP-1受容体作動薬による薬物療法を行います。

 

高円寺南診療所時代に基礎を確立した水氣道は、糖尿病の患者さんのためにも理想的な運動療法プログラムを具体的に提供して実践を続けてきました。杉並国際クリニックの時代に入って、水氣道のもつ生活習慣改善効果を一層引き出すための取り組みを展開しつつあります。

 

2型糖尿病でも、急性代謝障害を認めない代謝障害が中等度以下(随時血糖値250~300mg/dL程度またはそれ以下で尿ケトン体陰性)、まず、患者の病態を十分に解析して、適切な食事療法と運動療法を行います。この場合、生活習慣改善に向けて糖尿病教育を十分に行い、患者さんが治療に向けての意識を高められるようにすることが大切です。

 

こうした治療を2~3か月程度続けても、なお、目標の血糖値(HbA1c 7.0%未満)を達成できない場合には、経口血糖降下薬またはインスリンやGLP-1受容体作動薬などを用いられます。この場合、血糖のコントロール目標は、患者の年齢や病態などを考慮して患者ごとに設定するといった個別臨床的立場で決定します。

 

ただし、体重の減量や生活習慣の改善により、代謝状態が改善し、薬物の投与量の減少~中止が可能になってくることがあります。こうした効果は、食生活を含む生活習慣改善指導とともに水氣道を続けている糖尿病の患者さんにとっては、顕著な傾向であり、とくに、年間を通して水氣道の稽古に励んでいる会員でインスリンを使用している方はゼロになりました。