最新の臨床医学 2月21日(木)

木曜日のテーマ:骨粗鬆症についてQ&A

 

ここで掲載する内容は、公益財団法人 骨粗鬆症財団のホームページから引用したものです。骨粗鬆症についてわかりやすい解説をしています。

以下のHPで確認することができます。

http://www.jpof.or.jp/

骨粗鬆症は、長年の生活習慣などにより骨がスカスカになって骨折しやすくなる病気です。最初は、自覚症状はありませんが、ひどくなると骨折を起こし、寝たきりの原因となる場合もあります。多くは腰や背中に痛みが生じて医師の診察を受けてからみつかります。

 

しかし、骨粗鬆症になってから治すのはたいへんです。骨粗鬆症にならないように、日ごろから予防を心がけることが大切です。骨粗鬆症を予防することが、ほとんどの生活習慣病を予防することにつながります。

 

そのために、高円寺南診療所では女性では、45歳以上、男性でも50歳以上の皆様に骨量計測を推奨し、骨年齢を算出し、骨粗鬆症の早期発見、早期対応に力を注いでいます。それでは、骨粗鬆症についてもっと詳しく勉強していきましょう。

 

私は、昭和学院短期大学のヘルスケア栄養学科で、臨床栄養学を担当していたことがありますが、「臨床栄養学」の教科書を2冊出版して、改訂を重ねています。どうぞご参考になさってください。

 

それぞれのQ&Aのあとに【杉並国際クリニックからのコメント】を加えました。

 

 

Q8

アメリカ人と日本人のカルシウム摂取量について

 

日本人のカルシウムの摂取量が、アメリカ人よりも少ないといわれているのはなぜでしょうか。日本人の方が、魚類などからカルシウムをとっていると思っていたのですが

 

A

日本人と比較して、アメリカ人は牛乳をはじめとする乳製品の摂取量が多いといわれています。また、魚や海草など、日本の伝統的な食材にもカルシウムは多く含まれていますが、牛乳と比較すると、一度に大量に摂取しにくいことも原因の1つと思われます。

 

 

【杉並国際クリニックからのコメント】

カルシウムの摂取量とカルシウムの吸収率との違いを認識して議論しないとちぐはぐなやりとりになってしまいかねません。

 

<日本人と比較して、アメリカ人は牛乳をはじめとする乳製品の摂取量が多いといわれています。>

その通りですが、牛乳をはじめとする乳製品のカルシウム吸収率は概ね40%にのぼります。

これに対して、<魚や海草など、日本の伝統的な食材>のカルシウム吸収率はおよそ20ないし30%に過ぎません。

 

食材の違いによるカルシウムの吸収率の違いについては、もっと注目すべきではないかと思います。これら日本の伝統的な食材の摂取量が乳製品に比べると少量しか摂取できないか、というと個人差はありますが、必ずしもそうとまではいえないのではないでしょうか。

 

それでは、アジア人はカルシウム摂取量が少ないのに、乳製品の大消費者であるアメリカ人よりも骨粗鬆症や骨折の発症率が少ないのはなぜでしょうか?

 

アジア人は乳製品摂取量が少なく、カルシウム摂取量も少ない(500mg以下/ 日)こと、平均的に大腿骨(骨盤)骨折の発生率が欧米人よりも低いことは事実です。 このことは次のように説明されます。

• 遺伝:骨密度の高さと関連する遺伝子はアジア人に多く見られる

• 体型:アジア人の背が低い(つまり低い高さから転ぶ)、大腿骨の頸部の形が 異なり、外傷性全身症状に抵抗性が高い

• 環境:体を動かすことがアジアではヨーロッパ人よりも大切なこと(また、しゃがむという姿勢が骨への有効性を高めると考えられる)。たとえば、香港や シンガポールでは骨折の発生率は、米国よりもわずかに少ないだけである。

• ビタミンD:アジア人は一般的に脂肪身の魚からより多くのビタミンDを摂取しています。

 

日本では脊椎骨の圧縮が頻繁に見られる。寿命の延長に伴い、骨粗鬆症に関連する骨折は、多分、アジアでは高い速度で増加しています。これは多くのアジア諸国で骨粗鬆症は公衆上の健康問題となっています。

 

政府当局者は、予防策を訴えるとともに、アジア人にとってのカルシウムと乳・乳製品摂取の重要性と利点を示す最近の研究成果を訴えています。 *コーカサス系人種(白人)と同様、アジア人の骨密度は、カルシウム摂取量に依存しています (摂取量が多いほど骨密度が高くなる)が、アジア人のリスク要因は活動量の不足、 カルシウム摂取不足と転倒です(カルシウム不足の人ではリスクが2、3倍高くなる)カルシウム摂取の増加は、骨密度の増加を伴います(3つの介入試験、子供対象 1件、成人対象2件により示されています)。

 

カルシウム摂取と水氣道(体を動かす活動性の増加、しゃがむ動作、転倒を防止する平衡感覚の鍛錬など)は、骨粗鬆症対策にとっては理想的なコンビネーションであることが理解できるものと思われます。