ここで掲載する内容は、一般社団法人日本アレルギー学会のホームページ<一般の皆さま>から引用したものです。
最後に杉並国際クリニックからのメッセージを加えています。
蕁麻疹①
Q1
蕁麻疹の原因にはどのようなものがありますか
A
蕁麻疹は、一部の例外を除き、ほとんどのものが皮膚の中にあるマスト細胞と呼ばれる細胞が活性化されることにより症状が起こります。マスト細胞を活性化する刺激としては、アレルギーの原因となる物質、薬剤、皮膚をこすることや温度の変化、皮膚を日光にさらしたり、汗をかいた時などがあります。
しかし、蕁麻疹の中で最も多く発生する特発性の蕁麻疹は、明らかな刺激なく症状を繰り返すことが特徴です。このタイプの蕁麻疹の要因としては、疲れ、ストレス、細菌やウイルスの感染、マスト細胞を活性化する自己抗体の存在などが知られています。しかし、これらがどのようにして特定の人に、またある時間にのみマスト細胞を活性化するのかということは、まだ良くわかっていません。そのため、蕁麻疹の原因とは一つではなく、いくつかの要素が組み合わさって一定以上のレベルにまで達した時に症状が現れると考えられます。
血管性浮腫と呼ばれる、まぶたやくちびるなどが突然膨れあがって2,3日かけて消える病型では、長く飲んでいる高血圧の治療薬の一種や遺伝子の異常が原因となっていることもあります。
杉並国際クリニックからのメッセージ
蕁麻疹は、視診上では膨疹とされます。紅斑を伴う一過性、限局性の浮腫が病的に出没する疾患です。多くは強い痒みを伴うので、睡眠障害をもたらしたり、集中力を損ない日中の生産的活動を妨げたりなどQOLを大きく損なう原因にもなりえます。蕁麻疹について最も信頼できる情報ソースは、「蕁麻疹診療ガイドライン2018日本皮膚科学会ガイドライン」です。
蕁麻疹は、一般に皮膚マスト細胞が何らかの機序により脱顆粒し,皮膚組織内に放出されたヒスタミンを始めとする化学伝達物質が皮膚微小血管と神経に作用することによって発症します。その結果、血管拡張(紅斑),血漿成分の漏出(膨疹),および痒みを生じます。
蕁麻疹におけるマスト細胞活性化の機序としてはI型アレルギーが広く知られているが,実際には原因として特定の抗原を同定できることは少ないです。
一方,蕁麻疹にはI型アレルギー以外に機械的擦過を始めとする種々の物理的刺激や薬剤,運動,体温上昇などに対する過敏性によるもの(刺激誘発型の蕁麻疹),明らかな誘因なく自発的に膨疹が出現するもの(特発性の蕁麻疹)などがあり,症例によりこれらの機序のいずれか,または複数の因子が複合的に関与して病態を形成すると考えられます(表1)。
特に 慢性蕁麻疹では,しばしばIgEまたは高親和性IgE受容体に対する自己抗体やヘリコバクター・ピロリ菌感染などが関与し得ることが知られているが,それだけでは病態の全体像を説明できないことが多いです。
また, 直接的誘因は個体に曝露されると速やかに膨疹を生じることが多いのに対し,背景因子は個体側の感受性を亢進する面が強く,因子出現と膨疹出現の間には時間的隔たりがあることが多いです。また,両者における各因子は必ずしも一対一に対応しません。
そのため,診療においてはすべての原因をひとつの因子に求めるのではなく,蕁麻疹の病型,病歴,社会 的背景や蕁麻疹以外の身体症状などにも留意し,表1 を参考に何らかの因子の関与が疑われる場合には適宜それらを明らかにするための検査を行い,対策を講ずる姿勢が大切です。
表1 蕁麻疹の病態に関与する因子
1.直接的誘因(主として外因性,一過性)
1)外来抗原
2)物理的刺激
3)発汗刺激
4)食物*: 食物抗原,食品中のヒスタミン,仮性アレルゲン(タケノコ,もち,香辛料など),食品添 加物(防腐剤,人工色素),サリチル酸*
5)薬剤 : 抗原,造影剤,NSAIDs*,防腐剤,コハク酸エステル、バンコマイシン(レッドマン症候群),など
6)運動
2.背景因子(主として内因性,持続性)
1)感作(特異的IgE)
2)感染
3)疲労・ストレス
4)食物 抗原以外の上記成分
5)薬剤 :アスピリン*,その他のNSAIDs*(食物依存性運動誘発アナフィラキシー),アンジオテンシン変換酵素(ACE) 阻害薬*(血管性浮腫),など
6)IgEまたは高親和性IgE受容体に対する自己抗体
7)基礎疾患 :
膠原病および類縁疾患(SLE,シェーグレン症候群など)造血系疾患,遺伝的欠損など(血清C1-INH活性が低下)
血清病,その他の内臓病変など
日内変動(特発性の蕁麻疹は夕方~夜にかけて悪化しやすい)
*:膨疹出現の直接的誘因のほか,背景因子として作用することもある.
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