最新の臨床医学 1月27日(日)心療内科についてのQ&A

内科2

 

心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。

それは日本心療内科学会のHPです。

 

心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。

 

Q&Aは、想定した事例です。Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。※「質問」をクリックするとが表示されます。

 

 

通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。そこで、「質問」「答え」の後に、<杉並国際クリニックの見解>でコメントを加えることにしました。

 

 

「質問24」

息子のことですが、大学生になっても大事な持ち物をなくしたり、ミスや忘れ物をすることが多く、困っています。

 

よく話を聴いていなくて違うことをする、と高校生の時、先生から注意をよく受けました。

 

これでは大学を卒業できるのか、就職活動はどうなるのか、先行きが不安です。

 

どこの科の先生にお聞きしていいか迷っています。

 

アドバイスをいただけないでしょうか?

 

 

「答え」

大学生の息子さんのことで心配をしておられるのですね。

 

忘れ物やミスが多いので大学生活にさしつかえがあるのではないか、就職活動はだいじょうぶなのか、将来社会に出た時にやっていけるのだろうか、といったことが一番の心配なのではないかと想像します。

 

最初に確認しておきたいことがあるのですが、ミスや忘れ物が多かったり、他人の話をよく聞いていなかったりというようなことが問題になったエピソードは、息子さんが幾つの頃まで遡れますか?

 

小学校の低学年の頃、今から思い起こすとどのようなお子さんだったでしょうか。

 

あるいは小学校入学以前はどうだったでしょうか?

 

その後、中学、高校時代を息子さんはどのように過ごしてこられたのでしょうか。

 

これらのことは、現在の息子さんの状況をどう考えるかにとって重要なので、ぜひしっかりと振り返ってみていただければと思います。

 

もし、小学生の頃やその前後には大きな問題がなく、高校で先生に指摘されたあたりが問題の始まりなのであれば、息子さんのうっかりミスは、もしかすると誰にでもある性格や傾向が少し目立つだけということなのかも知れません。

 

それでも、もし息子さん自身が大学でとても困っているのであれば、それはそれでなんらかのお手伝いがあったほうが良いと思います。

 

もし、子供の頃、それもかなり早い段階からの問題が今でも続いているということであれば、一度そのような問題に詳しい専門家に相談するのがよいと思います。

 

具体的に言いますと、各大学には、必ず学生のための相談室や、支援室という名称の組織があります。

 

そこには上記のような問題の専門家がいます。

 

息子さんに相談に行くことを勧めてください。

 

息子さん自身がどのくらい困っているのかということが出発点になります。

 

もう大学生なのですから、息子さんの意思を一番大事にしてあげてほしいと思います。

 

さて、念のために、もし息子さん自身が自分の状況に困っていて、大学の相談機関の先生との話合いのなかから、さきほど触れた、子供のころから続く自分自身の問題について、もっとはっきりしたことが知りたいというようにお話がまとまりましたら、精神科、児童精神科などの医療機関を受診していただいて診断をしていいただくのがよいと思います。治療は、身体症状がみられた場合には心療内科的な全人的アプローチが必要です。

 

その場合、大学の相談室のほうでもそのような専門機関の情報をもっていますので、紹介してもらうことも可能だと思います。

 

もしそういうことを心配する必要がない場合でも、就職活動はどのような学生にとっても苦労することなので、必要な相談部署(大学には必ず就職活動などのキャリア支援を行う部門があり、学生さんはそれを利用できるようになっています)を利用するように息子さんに勧めてください。

 

(齋藤清二)

 

 

<杉並国際クリニックの見解>

回答者の齋藤政清二先生は<もう大学生なのですから、息子さんの意思を一番大事にしてあげてほしいと思います。>と述べられていますが、たしかに、この種の相談では、誰が本当に困っているのか、誰が真の病人なのかを見極めることが大切だと思います。

 

相談者の一方的な相談内容に対して、回答者は安易にアドバイスをすべきではないというのが杉並国際クリニックのスタンスです。

 

困っていて、不安で、迷っていて、専門医のアドバイスを求めているのは母親です。しかし、息子さんが同様に、困っていて、不安で、迷っていて、専門医のアドバイスを求めているのでしょうか。それすら明確でないような相談に対してとりとめのない回答をすることは専門家として望ましくないと考えます。

 

場合によっては、母親の息子に対する望ましくない介入を強化し、息子さんをより苦しめることに加担しかねないからです。つまり、ケアを要する患者さんは、実は母親、というケースである可能性があるということです。

 

 <もし息子さん自身が自分の状況に困っていて、大学の相談機関の先生との話合いのなかから、さきほど触れた、子供のころから続く自分自身の問題について、もっとはっきりしたことが知りたいというようにお話がまとまりましたら、精神科、児童精神科などの医療機関を受診していただいて診断をしていいただくのがよいと思います。>というのが、齋藤先生のご回答であれば、そもそも、

 

心療内科学会のホームページのQ&Aにこのような事例を掲載することにどれだけの意味があるでしょうか。

 

心療内科専門医は、萬(よろず)人生相談者、保険が効くお得なカウンセラー、プチ精神科医などと、来談者から勝手な誤解を受けることがしばしばあります。

 

それを助長しかねない記事であることを懸念します。

 

<治療は、身体症状がみられた場合には心療内科的な全人的アプローチが必要です>というアドバイスは、誤りではありませんが、このような相談を持ち込む状況にあるお母様には、なかなか通じにくいアドバイスだと思われます。