最新の臨床医学 1月26日(土)漢方治療についてのQ&A

漢方治療に関しては以下のQ&Aを採り上げ、解説を加えてきました。

 

慶應義塾大学医学部漢方医学センターの漢方Q&A

 

富山県立中央病院 内科和漢・リウマチ科-Q&A

 

三和生薬株式会社のHP「よくあるご質問」を紹介しています。

 

最後に<杉並国際クリニックからのメッセージ>を加えてきました。

 

 

 Q

授乳中ですが漢方薬なら飲んでも乳児に影響はないですか?

 

A

薬の種類にもよりますが、お母さん・赤ちゃんの状態を総合的に判断する必要があります。乳汁に移行するとされる場合でもお母さんに吸収された成分のわずか1%以下と言われており、これが赤ちゃんにどの位の影響を与えるかを考える必要があります。

 

構成生薬として下剤に用いられる大黄が配合されている処方の場合、大黄の主成分であるアントラキノン誘導体は母乳中に移行して乳児に下痢を起こす可能性があることが知られています。大黄の入った漢方薬は授乳中は服用を避けるか、授乳を一時中止してください。

 

詳しくは医師または薬局・薬店にご相談ください。

 

 

<杉並国際クリニックからのメッセージ>

 

授乳中の薬剤使用にあたっては、薬剤の添付文書をもとに判断することが原則となります。実際には、国内外を問わず添付文書では動物実験における母乳移行データをもとに「授乳を避けること」と記載されています。

 

海外では母乳の利点を生かすため、母乳移行薬物による乳児の影響をヒトのデータに基づき正確に評価する考え方が浸透しています。

 

たとえば、乳汁中/血漿中濃度比(M/P比)、相対的乳児投与量(RID)などのヒト母乳への薬物移行性あるいは乳児が母乳を介して摂取する薬物量に基づき評価数ことを推奨しています。

 

国立研究開発法人国立成育医療研究法人センターのホームページには、以下のコラムがあります。

 

授乳中にお薬を使うにあたって知っておいていただきたいこと

授乳中に安全に使用できると考えられる薬(一覧表)

授乳中の使用には適さないと考えられる薬

妊娠中・授乳中のお薬Q&A

授乳と薬の電話相談について

 

 

漢方薬は、<授乳中に安全に使用できると考えられる薬(一覧表)>にも<授乳中の使用には適さないと考えられる薬>にも掲載されていません。漢方薬を薬剤として無視しているか、そもそも漢方薬を薬と認めていない立場なのか、あるいは、漢方薬に関してはデータが不十分なのか判然としません。

 

 

ツムラのホームページのQ&Aが若干の言及しています。

 

Q

授乳中ですが漢方薬は飲めますか?

 

A 

薬の種類、服用期間、お母さん及び赤ちゃんの状態などを総合的に考慮する必要があります。例えば、便秘に効果のある漢方薬をお母さんが飲んでいると、その授乳を受けた赤ちゃんが下痢するということがあります。その他の漢方薬については、いまのところ問題となる報告はされておりませんが、念のため、受診する時、あるいは薬局薬店でお薬を買う時に、授乳中であることをお申し出ください。

 

⇒「便秘に効果のある漢方薬」とは、一般的には大黄を含む漢方薬を指すものと考えてよいでしょう。しかし、実際には、大黄だけではないようです。

 

 

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構のホームページには、より具体的なQ&Aがあります。

 

Q

授乳中です。赤ちゃんに影響の少ない市販の便秘薬はありますか?

 

A

赤ちゃんへの影響はないと考えられているくすりもあります。薬局で便秘薬を買う時には、薬剤師に授乳中であることを伝えて相談してください。

 

解説

便秘薬は、大まかに、(1)腸の粘膜を刺激して腸の動きを活発にするものと、(2)便に水を含ませ便を軟らかくするものに分類されます。

 

(1)に分類される便秘薬のうちピコスルファートナトリウムやビサコジルは母乳中へはほとんど移行しないので乳児への影響はないとされています。しかし、例えば、センノシド、センナ、ダイオウ、カサンスラノールなどは母乳中に移行して乳児に下痢を起こすことがあるとされています。これらを服用する場合は、授乳しないでください。

 

(2)に分類される酸化マグネシウム、グリセリンなどは、水分を腸管内に移行させて便のかさをふやし、軟らかさを保ちます。通常は体内にほとんど吸収されないので乳児への影響はほとんどないと考えられます。

 

まず問題ないとされるくすりでも、赤ちゃんに軟便や下痢など普段と違った様子がないかよく観察しながら服用(使用)してください。

 

便秘薬の使用に加えて適度な運動と十分な水分摂取や、サツマイモ、セロリ等の繊維の多い野菜を摂るなどの食生活の工夫も併せて行うと効果的です。くすりを服用しても便秘が長期にわたる場合は医療機関を受診してください。その際は、授乳中であることを医師に必ず伝えましょう。