ここで掲載する内容は、一般社団法人日本アレルギー学会のホームページ<一般の皆さま>から引用したものです。
最後に杉並国際クリニックからのメッセージを加えています。
薬物アレルギー②
Q3
薬物アレルギーを起こしやすい薬はありますか?
A
抗菌薬や消炎鎮痛薬、感冒薬、抗痙攣薬、痛風治療薬は、薬物アレルギーを起こしやすく、また重症型になる恐れもあるため注意が必要です。
抗菌薬では、ペニシリンやセフェム系などの抗菌薬が即時型、遅延型のアレルギー反応ともに多く起こしやすいのですが、テトラサイクリン系の抗菌薬やサルファ剤、抗結核薬などもアレルギーを引き起こします。
それらに次いで、高血圧や糖尿病の治療薬や、画像検査に用いられる造影剤、局所麻酔薬、抗腫瘍薬、関節リウマチ治療薬によるものも少なくありません。
また、薬剤には食物成分が含まれることがあり、卵や牛乳アレルギーがある人は注意が必要です。消炎鎮痛薬には卵由来の塩化リゾチームが、下痢止めには牛乳由来のタンニン酸アルブミンが含まれている場合があります。
杉並国際クリニックからのメッセ―ジ
薬剤アレルギーは他の疾患と比べて扱いづらいところがあり,医原性であり、かつ正確な診断と有症率調査が難しいという特徴を持っています。
薬剤アレルギーは,今まで国内にも国際的にも確立されたガイドラインがありません。臨床現場で当該薬剤を投与される患者数を,短期投与から長期投与までを正確に全数把握するのも困難であり,投与患者総数に対して薬剤アレルギーを発症した患者の比率の算出が極めて難しいです。眼前で起きてほしくない不運,あるいは予知・予測とはほど遠い偶発的事象と捉えられがちです。
とりわけ、薬剤アレルギーの診断基準が確立していないことがで問題が生じ、医学的論争の原因になっています。
症状,機序が多様であるだけでなく,アレルギー機序で生じたのではない反応(例:X線造影剤によるアナフィラキシー)や,機序不明の反応も薬剤アレルギーに含めることも多く,検査についても万能なものがありません。さらには,医師により薬剤アレルギーの解釈が異なっており,IgE依存性のI型反応だけを薬剤アレルギーと称する医師・研究者も少なくありません。
2015年にJ Allergy Clin Immunol誌に掲載された米国の報告(平成25年3月19日に開催された,薬剤アレルギーに関するワークショップの概要) 1)によると,drug allergy(薬剤アレルギー)という用語自体が検討対象となっており,代案としてdrug hypersensitivity(薬剤過敏症)も検討されました。そして、後者については機序が免疫機序に限らない(例えば, 代謝酵素欠損による副作用も含むことになる)という懸念が示されています。
薬剤アレルギーのうちでも,内科医にとって重症度や緊急度の観点から特に注意を要するのは,即時型反応(アナフィラキシーや蕁麻疹)と重症薬疹です。そこでアナフィラキシーについて説明します。
アナフィラキシーとは、「アレルゲン等の侵入に寄り、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危険を与え得る過敏反応」をいいます。とくに、「アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合」を、アナフィラキシーショックといいます。
アナフィラキシーの多くは
①免疫グロブリンIgEが関与する免疫学的機序により発生し、食物,刺咬昆虫(蜂、蛾)の毒、薬剤が誘因となります。とりわけ、薬剤は②IgEが関与しない免疫学的機序、および③マスト細胞を直接活性化する非免疫学的機序によっても、アナフィラキシーの誘因となりえます。また、造影剤は、IgEが関与する機序と関与しない機序の両者により、アナフィラキシーの誘因となりえます。
① 免疫グロブリンIgEが関与する免疫学的機序:βラクタム系抗菌薬、ニューキノロン系抗菌薬、非ステロイド系消炎鎮痛薬、造影剤、生物学的製剤など
②IgEが関与しない免疫学的機序:非ステロイド系消炎鎮痛薬、造影剤、デキストラン、生物学的製剤など
③ マスト細胞を直接活性化する非免疫学的機序:オピオイドなど
以上を俯瞰してみると、アナフィラキシーを起こしやすい薬剤を用いなくてはならないのは、整形外科医、リウマチ専門医、ペインクリニック専門医、感染症専門医などであることが浮き彫りになってきます。薬剤アレルギーで大きなリスクを念頭に、常に警戒していなければならない専門領域ということになります。
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