心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。
それは日本心療内科学会のHPです。
心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。
Q&Aは、想定した事例です。Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。※「質問」をクリックするとが表示されます。
と書かれています。
高円寺南診療所に通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。そこで、「質問」「答え」の後に、<杉並国際クリニックの見解>でコメントを加えることにしました。
「質問22」
自宅での食事はできますが、外食や人前で食事をしようとすると胃がむかむかし、吐き気がして食べられません。
大学では学生相談室のフリースペースで、一人で昼ごはんを少しだけ食べていますが、社会人になったらこれでは困ると思います。
どこで相談したらよいでしょうか。
「答え」
人前で食事をしようとすると吐き気がして食事ができないのは、いつ頃からでしょうか。
みんなで食事をした時に何か恥ずかしい思いをしたり、いやな経験をしたりしたことはありませんか。
社会人になると、他人とコミュニケーションを取る上で一緒に食事をとる機会も多くなりますので、そのことを考えると逆に不安が強くなってしまうのではないでしょうか。
原因としては、いろいろなことが考えられます。自宅での食事はできるということですが、食事をしていて、少しの食事量でも胃もたれがしたり、時々胃が痛くなったりすることはないでしょうか。
症状を繰り返しているようでしたら、一度、胃カメラなどの検査を受けることを勧めます。検査で器質的な異常がない場合には、消化管の機能的異常が原因の機能性ディスペプシアという病気が考えられます。
症状を繰り返すうちに、会食や食事をすること自体にネガティブになり、症状が難治化する場合もあります。
また心理的な要因で症状が増悪することがあり、不安や抑うつなどの心理的問題と身体症状がお互いに影響しあっています。
治療としては、適切な内服薬、および、病気の原因を理解してもらい、症状と認知(症状に対する考え方)についてのアプローチを行う認知行動療法などが有効で、心療内科で治療を行います。
人前で食事をする時に、胃がむかついたり、吐き気がしたりするということですが、自宅や家族だけで食事する時にはほとんど何ともないのに、外食や知人・友人とは食べることが出来ない状態は「会食不能症候群」と呼ばれます。
また、自宅では他人と話をする時に緊張しすぎてうまく話せなかったり、人前に出ると、他人の視線が気になりすぎて、逃げだしたくなったりする場合には、社交不安症という病気が疑われます。
重症化すると、講義を受講できなくなって不登校の原因となったりします。
早い段階での治療が必要で、適切な治療で改善する疾患です。
また、幼少期から、他人と一緒に遊んだり、友人を作るのが苦手な方の中には、自閉症スペクトラム症の方もいます。
社交不安症や自閉症スペクトラム症では、精神科での治療が必要な場合が多いです。
まずは、学生相談室や保健管理センターへの相談をお勧めします。
(佐藤研)
<杉並国際クリニックの見解>
残念ながら、心療内科学会のHPに掲載するケースとしては中途半端です。
回答者も答えにくかったのではないでしょうか。診断としては機能性ディスペプシア、会食不能症候群、社交不安症、自閉症スペクトラムが挙げられていますが、社交不安症(社交不安障害)の会食恐怖がもっとも疑われると思います。
社交不安症とは、他人から注目されるような場面や恥ずかしい思いをするかもしれない状況に対して強い不安や恐怖を感じる病気です。その不安や恐怖が大きくなると、社会生活にも支障を来してしまいます。10人に1~2人がかかるふつうの病気です。人によって不安や恐怖の対象はさまざまです。
社交不安症の代表的な恐怖状況は複数知られているので列挙してみます。
会食恐怖:
食べているところを他人に見られると緊張して食べられなかったり、自分の立てる音が気になってのどが詰まってしまったり、人前で食事をすることを極端に恐れるタイプです。
スピーチ恐怖:
人前でスピーチをする際、緊張のあまり頭が真っ白になったり、声が震えたりして強いプレッシャーを感じます。
人前に立つ機会が増えた人にあらわれやすく、他の状況ではあまり不安を感じない人が多いのも特徴です。
実は、私もこの症状が繰り返し出現したことがあります。水氣道と声楽(東京藝術大学の別科の実技試験を5年連続で受験して、藝大教授であろうと誰であろうと人前で歌うことが平気になりました)と国際医学会(英語でもドイツ語でも発表できるようになったので、平気になりました)。
赤面恐怖:
人前や異性の前などの特定の場面で緊張し顔が赤くなることを恐れて、そのような場面を過剰に意識したり、人が集まる場所を避けてしまったりするタイプです。
電話恐怖:
周囲に人がいるなかで電話を取ったり掛けたりするとき、強い緊張を感じて、言葉が出なくなったり、不安になったりするタイプです。
会社職員の女性に多く、電話の相手や周囲の人達からどう思われたかを気にする傾向があります。
視線恐怖:
人と目を合わせることが怖く、「見られている感じ」が常にしてしまうような他人の視線が怖いタイプと、自分の視線が相手を不快にさせてしまうことを恐れるタイプがあります。
前者が重症になり妄想的になると統合失調症などの可能性もあるので注意して観察しています。
書痙:
人前で字を書こうとすると緊張してしまい、手が震えて書くことがむずかしくなるタイプ。人から変に思われるのではないかと思うと、ますます震えたり書けなくなったりしてしまいます。
振戦恐怖:
人と接する場面で、手や足など体がガタガタ震えてしまい、そうした場面が怖くなるタイプです。
発汗恐怖:
人から話しかけられると、緊張してぐっしょりと汗をかく、仕事で接客をしていると、額からポタポタと流れるほど汗をかき、タオルが手放せないなど、人と接する恐怖や緊張のあまり、大量の発汗をするタイプです。
これらの社交不安症に対して薬物療法と心理療法、とくに認知行動療法を併用
すると有効性が高いといわれています。
克服のコツは性格の問題としてあきらめるのではなく、病気の性質を正しく理解して、解決可能な課題であるという認識を持つことです。
「逃げず、避けず、誤魔化さず」状況に直面〔暴露〕する勇気をもつことです。
杉並国際クリニックでは、薬物療法は必須であるとは考えていませんが、不安・恐怖や回避行動が顕著な方は、いったん薬物療法でそれらの辛い症状を緩和し、水氣道や聖楽療法を通して、これらの病気を克服してきた患者さんをたくさん経験しています。
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