平成元年開設以来、足かけ30年にわたり「体と心のトータル・ケア」を提供し、今後のわが国のめざすべきモデル診療所の確立を目指してきました。
その目標の実現のため西洋医学と東洋医学の両面での知識・技術・経験を駆使した独自の統合医療(全人的医療)を実践しています。
私共の統合医療(全人的医療)のモデルは心身相関理論と独自の人格・環境・習慣病理論に基づくものです。
高円寺南診療所では「医療者の専門性と患者さんの希望とを総合して医療上の判断を行う考え方」を実践しております。それは、多様な患者さんの一人一人の思考・行動パターンを含むお人柄や、日々の生活を取り巻く環境の因子を含めて病気の成り立ちや治療を考える医療です。
統合医療(全人的医療)を目指す高円寺南診療所は、とりわけ、専門医療の隙間の病気など現代の標準的医療制度が抱える限界や不備や矛盾、そのため居場所や行き場所を見失い悩み苦しむ弱者である患者の皆様とともに30年間歩み続けることができました。
健康には自己責任が求められる時代になってきました。しかし、自己責任ばかりでは健康は守りきれません。自然環境や人的・社会的環境の悪化や劣化は、個人の努力ばかりでは如何ともし難いものがあります。
超高齢社会を迎えて、認知症をはじめ、フレイル・サルコペニアなど医療と介護とにまたがるような大きな課題が日常化しています。
高齢者の病気は、ますます複雑化・多様化し、また個別化してきています。そのため、複数の専門診療科を受診しても適切な対応が取れなくなりつつあるのが現状です。
疾患単位の専門領域の寄せ集めで、科目間の連携が十分に機能していない一般的な総合病院型の大量生産的マニュアル医療には限界や矛盾が増えてきたように思われます。
たとえば高齢者のポリファーマシー(多剤服用)という医療課題が大きく浮上してきました。
厚生労働省は個別専門医に対しても、高齢者が複数持つ疾患の治療優先順位に配慮したり、リスク・ベネフィットバランスを検討したりすることを求めていますが、実効性に欠ける掛け声に過ぎません。
かといって寄せ集め的な通常の総合診療でも効果不十分であり、やはり心身医療をベースとする統合医療(全人的医療)を導入しなければ解決できない医療問題であると考えています。
超高齢社会にあっては、皆が少なくとも5年後、10年後の将来を見据えて、全人的健康のための備え(健康創生)に基づく健康管理による要介護状態や重大な病気の予防が必要です。
これの重要性に気づいて生活や行動の変革を行えば、多くの皆様が苦痛に加えて苦悩の老後を送らなくて済むようになることでしょう。
他方、現役世代の皆様は、効率重視の競争社会にあって、メタボリックシンドロームなど生活習慣病をはじめ、ストレスに伴う身体疾患(心身症)などに見舞われがちです。
喘息やアトピー性皮膚炎をはじめ花粉症やダニアレルギーなどのアレルギーの病気は国民病であるとともに環境問題とも密接な関係があります。
線維筋痛症や慢性疲労症候群など原因不明とされるリウマチ様疾患も解決すべき課題です。
有効な手立てがあるにもかかわらず、現行の保険診療の枠組を標準的医療として絶対視し過ぎるために、適切な診療から遠ざかり、あるいは遠ざけられてしまっている線維筋痛症などの病気で苦しんでおられる皆様は、決して特殊で例外的な少数の方々ではありません。むしろ時代の病の先駆けともいうべきで、ますます増加の一途にあるように思われます。
これからの時代を賢明に生きていくためには既存の権威を盲信せず、世俗の権力に媚びず、弱者同士が一致協力し合って現実の困難を乗り越え、創造的で芸術的な資質を発揮して生産的かつ創造的にたくましく生きていくことが肝要であると確信しています。
こうした背景をもとに誕生したのが、新しい独自な診療所外活動です。
水氣道®での心身の鍛錬や聖楽院における芸術活動は、高円寺南診療所から日本国内のみならず、全世界に向けて提唱している新しい心身医学療法です。この新しい心身医学療法こそが全人的医療の中心的な要素です。これらは、順調に成長を続け素晴らしい成果を上げています。
幸い、生活リズム調整療法、鍼灸療法、心理療法(とくに認知行動療法)さらには高円寺南診療所オリジナルの新しい画期的な心身医学療法として、水氣道®や聖楽療法が効果を発揮しています。
すでに、かつての弱者の群れの中から、人間愛に満ち、勤勉で優秀な人材が育ちはじめ、私たちのチーム医療や関連する活動にもたくましく積極的に参画し、社会に貢献しています。
これらの独自のシステムがもし保険収載されれば、多くの患者さんを救済することが可能となるはずです。そのためには広く皆様のご理解とご協力が是非とも必要です。
最後に、今年は高円寺南診療所30年の歴史の総括を完了した後、新たに『杉並国際クリニック』として、皆様と共に新しい時代を迎えたいと願っております。
疾病の地球規模化やますます盛んになっていく国際交流を背景として、英語をはじめとする諸外国語による診療をさらに充実・発展させていきたいと思います。
外来における統合医療(全人的医療)の国際的モデルたらんとすることは、 従来からの皆様にとっても、より質の高い医療を提供できることに繋がるものと信じております。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
平成31年元旦
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