心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。
それは日本心療内科学会のHPです。
心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。
Q&Aは、想定した事例です。Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。※「質問」をクリックするとが表示されます。
高円寺南診療所に通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。そこで、「質問」「答え」の後に、
<高円寺南診療所の見解>でコメントを加えることにしました。
Q
消化器心身症ということばを聞いたのですが、どのような病気でどのような治療をしたらよいでしょうか?
A
消化器心身症には、二つの考え方があります。第一は心理社会的ストレスで発症あるいは増悪する消化器疾患です。
もう一つは、消化器症状がありながら、その原因となりそうな病気が一般的な内視鏡検査や超音波検査、あるいは一般的な血液検査で見つからないものです。
後者は、機能性消化管疾患と呼ばれますが、消化器不定愁訴とも呼ばれます。
ストレスによる増悪あるいは症状によるストレスのために心理的な問題と言われたりすることがありますが、その違いは後述のように明らかになってきました。
消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)は、ストレスによって発症あるいは増悪が顕著で、以前は消化器心身症の代表のように言われていました。
しかし、1980年代のピロリ菌研究によって消化性潰瘍におけるストレスの果たす意義の解釈が変わってきました。
阪神淡路大震災でも、そして東日本大震災でも、ピロリ菌感染者では消化性潰瘍が悪くなり、潰瘍から出血を起こす患者さんも少なくありませんでした。
一方、同じ被災地にいてもピロリ菌非感染者あるいは除菌者では消化性潰瘍を発症する人は極めて少数でした。
すなわち、ピロリ菌感染(必ず炎症を伴います)とストレスの両方が揃った時に消化性潰瘍が発症することが判りました。
潰瘍性大腸炎やクローン病のような炎症性腸疾患もストレスによって炎症が増悪することが確認されています。
治療として、ピロリ菌陽性のストレス誘発潰瘍では除菌、炎症性腸疾患は原疾患の治療を優先し、あわせてストレス軽減の対策を考えます。
機能性消化管疾患の代表には、胃もたれや胃の痛みが慢性的に続く機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)と、便秘や下痢のような便通異常があって、腹痛や腹部不快症状を起こす過敏性腸症候群とがあります。
いずれもストレスによる症状増悪が特徴的です。いずれの病気でも内視鏡検査では異常がないのに、粘膜組織を採取して顕微鏡で調べると、極めて軽度の炎症があることが判ってきました。
治療に際して、これらの病態にみられる炎症への対応策はまだ判らず、ストレスを軽減する治療、そして前者では消化管運動賦活薬、後者では便通異常の調整、過敏性腸症候群の治療薬を用います。
軽度であっても胃や腸に炎症があるところにストレスがかかることで症状が出現したり増悪するものが消化器心身症です。うつ病などの精神神経疾患と大きく異なるのはこの点にあると言ってもいいでしょう。
(本郷道夫)
<高円寺南診療所の見解>
本郷道夫先生は、世界的に独創的な絶食療法で有名な東北大学医学部心療内科1996年(平成8年)から2011年(平成23年)まで教授を勤めていらした方です。
本郷先生は、消化管機能の専門の立場から、消化管機能障害を中心に科を大いに発展させました。
現在、公立黒川病院(宮城県黒川郡)に所属されているようです。
以下、黒川病院のHPから引用します。
平成24年4月より病院管理者として着任しました。地域の皆さまの病院を創っていきたいと思います。
・これまで大学病院で、消化器内科、心療内科、総合診療部を担当してきました。
・むねやけ、胃もたれ、胃痛、腹痛、便秘、下痢、食欲不振、こころの悩み、自律神経障害、など、何でもご相談ください
さて、この問いは、心身症の専門領域についての質問です。心身症には消化器心身症の他に、呼吸器心身症、循環器心身症などが大きな三本柱になっていますが、その他の身体系統にもそれぞれの心身症があります。
ここでは消化器心身症について説明されています。
本郷先生は「軽度であっても胃や腸に炎症があるところにストレスがかかることで症状が出現したり増悪するものが消化器心身症」であるとの回答を与えています。そして具体的には、機能性消化器疾患(消化器不定愁訴、機能性胃腸症、過敏性腸症候群)、消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)などを例示しておられます。
いずれにしても、本郷先生は、<ストレスによって炎症が増悪する>という消化器心身症の病態を説明しておられます。
この御指摘はとても大切です。なぜなら、<ストレスによって炎症が増悪する>のは消化器心身症に限らず、炎症を伴う心身症についてもあてはまる病態だからです。
高円寺南診療所では、「炎症」をたくさん見ています。感染症のみならず、リウマチのような自己免疫疾患も炎症がベースですし、アレルギーも特殊な炎症として理解されているからです。
つまり、リウマチもアレルギーも「炎症」性疾患であり、心理社会的ストレスにより悪化する病気だということです。
本郷先生が説明されているように、こうした疾患は心身症として理解することで、より効果的な治療が可能となります。身体的・心理的・社会的ストレスを軽減すること、克服することが、これらの病気の治療に極めて有効になります。
高円寺南診療所では鍼灸療法、心理療法の他にユニークなオリジナルな心身医学療法として水氣道®、聖楽院の聖楽療法は、いずれもこうした身体的・心理的・社会的ストレスを軽減すること、克服することを実践して、顕著な治療効果を発揮していることは、皆様が経験していらっしゃる通りです。
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