漢方治療に関しては一般社団法人 日本東洋医学会 一般の方へのHPを検索してみました。
ここには<漢方ストーリー>という読み物がりますので、お読みになってください。
ただし、具体的なQ&Aは掲載されていません。
そのため、以下のQ&Aを採り上げ、高円寺南診療所の立場から、<高円寺南診療所からのメッセージ>を加えてきました。
富山県立中央病院 内科和漢・リウマチ科-Q&A
今回からは、さらに一歩進めてオリジナルの「漢方よくあるQ&A」をご紹介いたします。
Q 1
漢方薬の服用は食前とされていることが多いですが、つい飲み忘れてしまします。食後服用しても良いでしょうか?
A
はい。食後の服用でも結構です。服用のタイミングにこだわるあまり薬を飲み残してしまうことは賢明ではありません。
高円寺南診療所で処方する漢方薬の多くは食前服用を指示しています。しかし、従来から食間服用が一般的とされてきました。
「食間」というと、<食事中に、食物と一緒に>という意味に受け取られがちなので、食前としています。
「食間」というのは、食事と食事の間の空腹な時間>を意味します。ただし、文字通りの「食間」に服用していただくことも、実際にはなかなか難しいのが現実です。
それでは、なぜ、わざわざ空腹時に内服するように指示されているのかについてですが、これは伝統的な教えであって、はっきりとした科学的根拠は示されていません。
食事との関係で、内服のタイミングは治療上問題になるほどではないという意見すらありますが、胃酸のpHは、空腹時か食後かで違いがありますし、服用時間の差で吸収される薬剤の血中濃度が変わる可能性はあります。
食前と食後では、食後の方が吸収がより早いので、速効性を優先する場合には食後の内服に利がありますが、逆に安全性を考慮すれば食前の服用が理に適っています。
食間服用の指示が文献上頻繁になされているようになったのは宋代(960~1279年)以降だとされます。
高円寺南診療所の見解は、たとえ科学的な検証が十分なされていなくとも、永年にわたる人体実験の末に生き残っている先人医師たちの経験の集積は、それなりに尊重すべき未知の真理が含まれている可能性が高いと考えて尊重すべきではないか、ということです。
そして、その上で新たな工夫を凝らすことによって、より効果を挙げる方法を考案すべきだと考えます。
しかし、だからといって食前の内服を忘れたために、次の食事時間まで内服せずに先延ばしにしてしまう必要はまったくありません。そのような場合であっても、安心して食後内服をしてください。
どうしても食前服用が望ましいのは、薬理作用が強く副作用が出易い麻黄を含む漢方薬(附子剤)を処方する場合です。
これに対して胃がデリケートな人の場合や胃に負担が掛かる生薬を含む漢方薬を処方するべきにも食後投与です。
たとえば、地黄剤や麻黄剤などは、胃の具合を悪くする場合があるため、処方を避けるか、あるいは食後に服用することを指示します。
高円寺南診療所で処方する漢方薬は、伝統的な煎じ薬ではなく、他のほとんどの医療機関と同様に近代的なエキス製剤です。
煎じ薬の場合は原則的には伝統を踏襲して食前服用とし、「分2、分3」で処方することが一般的です。
たとえば分2の場合は朝夕とし、分3の場合は朝昼夜もしくは朝夕および就寝前服用を指示することでしょう。
つまり、同じ内容の漢方薬を一日に複数回服用していただくことになります。
これに対して、エキス製剤は、必ずしもこの原則にとらわれる必要はないと考えています。
そこで、高円寺南診療所ならではの処方方略としては、朝用、昼用、夜用あるいは就寝前用など、一日1回から3回までの漢方処方において、それぞれ異なる漢方製剤の処方をすることがむしろほとんどです。
その理由は、東洋医学は理論的に時間医学的な発想を持っているということと、近年、その時間医学の科学的
解明がすすみ、時間栄養学あるいは時間薬理学として発展してきていることを踏まえた処方を心掛けることのメリットがあるからです。
漢方処方は、診察時の見立てにより「証」を決定して、処方薬を処方します。
しかし、ヒトはどのような体質・気質であるにせよ、多かれ少なかれ時間帯によって体調や気分が周期的に変化します。
診察時に見立てた「証」の本質は持続的な性質を持つと考えているようですが、実際には時間的に大きく変化しています。このことは、それぞれの時間帯ごとに効果的な処方が異なっても良いことの根拠となります。
そこで、その時間帯ごとに、最も必要とされる漢方薬を処方することは理にかなった処方方略であると考えて実践して有効性を確かめつつ、さらに発展させているところです。
こうした処方方略を心掛けることによって、少しずつ経験的にわかってきたことがあります。
まず、内服忘れが減っていきます。次いで、時間帯ごとに異なる漢方処方をすることによって、患者さんの一日の周期が明確になり、生活リズムが是正され、昼と夜のメリハリが出てくることです。それに加えて、時間帯ごとの自分自身の体調・気分の変化を認識し易くなるようです。
そうなってくると、目的とする心身の不調が改善あるいは解消されていくばかりではなく、日中はより活動的・生産的に、夜間はリラックスして熟眠が可能となっていく様子が観察されます。
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