最新の臨床医学 10月12日(金)アレルギーの病気についてQ&A

ここで掲載する内容は、一般社団法人日本アレルギー学会のホームページ<一般の皆さま>から引用したものです。

 

最後に高円寺南診療所からのメッセージを加えています。

 

 

アトピー性皮膚炎③

 

Q3

プロトピック軟膏について教えてください。

 

A

プロトピック軟膏はステロイドホルモンではないので、ホルモン作用による副作用はありません。

 

皮膚からの吸収率が低いのでステロイド軟膏に比べると効果が弱めです。使用量の制限を守りましょう。

 

プロトピック軟膏はステロイドホルモンではない免疫抑制薬ですので、ステロイドホルモン作用による血管拡張・皮膚萎縮・多毛などの副作用がありません。

 

欠点は顔や首の病変にはよく効きますが、体や手足の病変には効きにくいことです。これはプロトピック軟膏の皮膚からの吸収率(経皮吸収)が低いせいです。

 

また、ぬったところがヒリヒリしたりほてったりするのも困ります。

 

しかしこのヒリヒリ感は3、4日ぬり続けるとおさまってきます。

 

一方、患者さんの中にはプロトピック軟膏だけで皮膚炎を良好にコントロールできるので、ほとんどステロイド軟膏を使用しなくてもいい人もいます。

 

 

プロトピック軟膏を使用する上で、2つの留意点があります。

 

一つは、2歳未満の乳幼児には使用できないことです。

 

これは2歳未満の乳幼児に対するしっかりとした臨床試験が行われていないためです。

 

それから、1回使用量が体重10kgあたりおよそ1g以下に制限されていることです。1日2回までぬることができますので、体重10kgの幼児では、朝1g、入浴後1gぬれることになります。

 

1gは少ないと思われるかもしれませんが、1gで成人の手4枚分の患部にぬることができますので、実は十分量です。

 

この制限量を守っていれば、経皮吸収されたプロトピックが血中で連続して検出されることはありませんので安心です。

 

説明書には、プロトピック軟膏によるリンパ腫発生の可能性が書いてあります。

 

大量にぬり続けると、血中にプロトピック軟膏が検出できるようになるのは当然です。

 

上記のように、使用制限量を守っていれば安心です。

 

日常診療での通常の使用では使用制限量を超えることはまずありません。

 

皮疹が広範な場合でも、まずステロイド軟膏を使用して皮疹を軽快させてから、プロトピック軟膏に移行しますので、制限量以上の使用に至ることはありません。

 

紫外線に対する注意も必要です。

 

海水浴・スキー・運動会・遠足などのように日光に過度に当たる日には、プロトピック軟膏はぬらないでステロイド軟膏をぬるようにしてください。

 

通常の通学や遊びの時は外用していただいてかまいません。

 

 

【高円寺南診療所からのメッセージ】

「皮膚からの吸収率が低い」という説明よりも適切なのは、タクロリムス外用剤(プロトピック軟膏)は、病変部の皮膚のみに透過し、正常皮膚から吸収されない、という説明の仕方でしょう。

 

まずは、プロトピック軟膏のその他の利点をまとめてみます。

 

①ステロイドにみられる毛細血管拡張や皮膚萎縮を来しません。

 

②顔面や頸部の病変に対して有効性が高いです。

 

③ステロイドとは異なり、緑内障の副作用がありません。

 

そこで眼周囲の皮疹で長期使用が必要な患者さんには第一選択とされています。

 

 

次に、プロトピック軟膏の欠点や短所をまとめてみます。

 

①本剤使用によるリンパ腫と皮膚癌発生について報告されています。

この情報を患者さんに提供すべきことになっています。

 

②皮膚刺激感がしばしばみられるので、その点は患者さんに十分説明をします。

掻破などによる外傷があると、とても痛むことがあります。

掻破などによる外傷が改善した後にこの軟膏を始めて皮膚の安定した状態を維持します。

 

③顔面や頸部以外の病変に対しての有効性は極めて低いです。

 

④激しい炎症にはあまり効果的ではありません。

激しい炎症には最初ステロイド外用剤を使用し、炎症が改善した後にこの軟膏を始めて皮膚の安定した状態を維持します。

 

⑤再燃してタクロリムス外用剤で改善しない場合があります。

その場合はステロイド外用剤を用います。

 

 

細菌感染が病状を悪化させている場合には、抗菌薬を併用する皮膚科専門医が多数います。

 

高円寺南診療所では、この方法は採用しません。

 

プロトピックは免疫抑制剤なので、本剤の継続素養により、細菌感染を助長している可能性を考えるからです。

 

プロトピックを中止してから、細菌培養と抗菌薬の感受性テストによる手続きを行い、その結果に基づき適切な抗菌薬を再検討して投与すべきだと考えています。

 

薬剤耐性菌の出現予防については、皮膚科医も内科医と同等の自覚と責任を持つべきではないかと考えています。

 

かゆみが強い場合には、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服で併用します。

 

一般的な皮膚科医は、リアクティブ療法を選択し、皮膚炎が悪化した場合のみに抗炎症外用剤を使って鎮静化をはかることが多かったようです。

 

高円寺南診療所では以前からプロアクティブ療法を選択し、治療によって症状の改善傾向がみられても、外用剤を直ちに中止せず、定期的に塗布を継続し、寛解状態を維持することを行ってきました。

 

その結果、再燃はかなり少なくなりました。再燃例のほとんどは、患者さんの自己判断による治療中断が原因でした。

 

高円寺南診療所が早期からプロアクティヴ療法を採択していた理由は、皮膚科専門によるリアクティブ療法による皮膚炎の再燃を経験し、ステロイドのリバウンドという訴えで高円寺南診療所を受診される方が、当時多かったからです。

 

リバウンドを繰り返す度に、皮膚科専門医からより強いステロイド外用剤を処方されるパターンを度々経験してきました。

 

外用剤ではコントロールできずステロイドの内服薬が処方されていた患者さんまでいました。

 

 

高円寺南診療所が採用してきたプロアクティブ療法は、以前は異端的な評価を受けていましたが、最近では専門医の間でも見直されてきています。

 

継続的なケアにより、段階的にステロイド外用剤を弱いものに切り替え、さらにはステロイドフリー(ステロイド剤の完全な離脱)となり、保湿を含むスキンケアのみで良好な状態を維持している人が増えてきたのは、とても喜ばしいことです。