最新の臨床医学 10月5日(金)アレルギーの病気についてQ&A

ここで掲載する内容は、一般社団法人日本アレルギー学会のホームページ<一般の皆さま>から引用したものです。

 

最後に高円寺南診療所からのメッセージを加えています。

 

 

アトピー性皮膚炎②

 

Q

ステロイド外用剤の副作用について教えてください。

 

A

症状に合った強さのステロイド外用薬を正しい量をぬっていれば、広い範囲の副作用はほとんどみられません。

 

注射や飲み薬は全身にはたらくため、全身性の副作用が現れますが、ぬり薬は皮膚の患部に直接はたらくため、皮膚から吸収されても血中に入る量はきわめて少ないのです。

 

通常の使用量であれば、全身性の副作用は現れません。

 

ぬり薬による副作用の多くは、薬をぬった部分の限られた場所に対するものです。

 

こうした部分への副作用は、ステロイドの副作用の中でも軽い副作用に分類され、「薬をぬった部分に毛が増える」、「皮膚が赤くなる」、「毛細血管が拡張する」、「皮膚がやや薄くなる」などがあげられます。

 

その他、「にきびの悪化」、「かぶれ」、「とびひ、みずむし、ヘルペス、ミズイボ(※註1)がまれに悪化する」といった症状もみられますが、医師の指導のもとに適切な対処をしていけばほとんど元に戻る心配のないものです。

 

また、「ステロイド軟膏をぬると肌が黒くなる」と言う人がいます。

 

じつは、ステロイドは皮膚の色素の生成を抑えるため、肌の色はむしろ白くなります。

 

アトピー性皮膚炎は皮膚の炎症ですので、ちょうど日焼けの炎症が治ると肌が一時黒くなるように、アトピー性皮膚炎も炎症がおさまった後は色素沈着が起こります。

 

これがステロイドの副作用だと誤解されているようですが、実はもうしばらく根気強くステロイド剤を使っていくことで、健常な皮膚に戻っていきます。

 

薬の副作用については、医師や薬剤師にぜひおたずねください。副作用への不安や誤解を解消し、薬と上手につきあっていきましょう。

 

※註1

「ミズイボウィルス」:正式名称「ポックスウィルス」。

 

 

【高円寺南診療所からのメッセージ】

高円寺南診療所に通院中の患者の皆様のために書き換えて、補足説明を加えてみました。

 

 

○ステロイド外用剤には副作用があります。

 

それは、「薬をぬった部分に毛が増える」、「皮膚が赤くなる」、「毛細血管が拡張する」、「皮膚がやや薄くなる」などです。

 

ただし、これらはぬり薬をぬった部分に限られた副作用であり、ステロイドの副作用の中でも軽い副作用に分類されます。

 

⇒ 医学的評価としては軽い副作用なのですが、肌は人目に触れやすいので、容姿が気になる患者さんにとっては、心理的に大きなストレッサーになっていることが多いです。

 

このあたりの患者-医師間の意識のずれが、悪徳なアトピービジネスを生んできた原因の一つであるということを、皮膚科専門医や総合アレルギー医などアトピー性皮膚炎を診療している医師は反省すべきであると思います。

 

幸いに、皮膚疾患に心身医学的アプローチをする皮膚科心身医学(あるいは心療皮膚科)という領域が認知されるようになってきたのは喜ばしいことだと思います。

 

その他、「にきびの悪化」、「かぶれ」、「とびひ、みずむし、ヘルペス、ミズイボ(※註1)がまれに悪化する」といった症状もみられます。

 

⇒一般用語なのでいったん医学用語に翻訳してみます。

 

にきび(尋常性ざ瘡:じんじょうせいざそう)、

かぶれ(薬剤性接触皮膚炎:やくざいせいせっしょくひふえん)、

とびひ(伝染性膿痂疹:でんせんせいのうかしん)、

みずむし(白癬:はくせん)、

ヘルペス(単純疱疹:たんじゅんほうしん)、

水いぼ(伝染性軟属腫:でんせんせいなんぞくしゅ)

 

これらは医師の指導のもとに適切な対処をしていけばほとんど元に戻るので心配のないものです。

 

 

⇒言い換えますと、かなり適切な対処をしないかぎり、すぐには元に戻せません。

 

残念ながら適切な対処がなされていないことが少なくありません。

 

適切な対処とはぬり薬の適切な選択と使用法に留まりません。

 

生活指導や運動療法さらにはメンタルケアなど内科的あるいは心身医学的なアプローチが必要なケースも少なくありません。

 

 

よくある誤解の例:「ステロイド軟膏をぬると肌が黒くなる」?

 

ステロイドは皮膚の色素の生成を抑えるため、肌の色はむしろ白くなります。

 

⇒アトピー性皮膚炎は皮膚の炎症なので、炎症がおさまった後は色素沈着が起こります。これを炎症後色素沈着といいます。

 

ステロイドの副作用だと誤解されているようですが、実はもうしばらく根気強くステロイド剤を使っていくことで、健常な皮膚に戻っていきます。

 

⇒これだけの説明では、永年アトピー性皮膚炎で悩んできた患者さんの多くにはピンと来ないのではないでしょうか。

 

高円寺南診療所では、ビタミンC(炎症後色素沈着に有効)をはじめとする適切なビタミン剤や、その人にあった漢方薬を適宜処方することによって、ステロイド剤の強度のランクを徐々に落としたり、減量をしたりして、最終的にはステロイドフリー(ステロイド剤なし)の状態を目指してきました。

 

ただし、保湿をはじめとするスキンケアはその後も根気強く継続していただいております。

 

○症状に合った強さのステロイド外用薬を正しい量をぬっていれば、広い範囲の副作用はほとんどみられません。

 

その理由は、ステロイド外用薬は、皮膚の患部に直接はたらくため、皮膚から吸収されても血中に入る量はきわめて少ないからです。

 

⇒実際には、皮膚科医によって不必要にストロンゲスト(最強)のステロイド外用薬を長期に処方されているケースが散見されます。

 

それは、一部は患者さん側の要因もあります。あらゆる慢性疾患は一定の必要な治療期間が必要であるにもかかわらず、すぐに効果があらわれないと簡単に転医してしまう方が、残念ながら少なくないからです。

 

症状に合った強さのステロイド外用薬を正しい量をぬるためには、定期的な通院が必要です。

 

特に安定期に至るまでの間は、皮膚の状態は、様々な条件や環境によって容易に変化するので、症状の把握は簡単ではありません。

 

したがって、症状に応じてステロイドの強さも適宜調整する必要があるということです。

 

高円寺南診療所では、定期的に通院していただくことによって、凡その変化のパターンがわかるようになるはずです。

 

それに応じて、少しずつ自分で調整できるように学習していただいております。