最新の臨床医学:6月16日(土) 消化器・内分泌・代謝病学

< 胃ポリープ>

 

しばしば、相談を受けるものの一つに胃ポリープがあります。

 

ポリープを発見したら必ず切除すべきは、結腸のポリープであり、胃のポリープのほとんどは良性です。

 

胃ポリープは内視鏡検査をすると5~7%の割合で発見され珍しいものではありません。

 

 

胃ポリープとは胃の内腔に突出した隆起の総称で、肉眼的に観察されるものです。

 

ただし、胃の粘膜上皮が限局性に増殖したものであって、非上皮性腫瘍や最初から悪性を強く疑うような病変はこれに含めません。

 

つまり、胃ポリープは一般的に良性ポリープであり、基本的には経過観察でよいことになっています。

 

ただし、大きくなるにつれて出血と癌化の問題が生じやすくなることも念頭に置くべきでしょう。

 

増大したポリープでは表面がもろく、出血を伴い貧血の原因となることがあります。

 

単発のことも多発性のこともあります。

 

 

胃ポリープは病理学的には、背景となる周囲の胃粘膜変化により分類されます。

 

過形成ポリープ

胃粘膜の萎縮性変化を伴う胃炎を背景とします。

 

これは胃腺窩上皮の過形成による腺管の延長と嚢胞状拡張を特徴とします。

 

間質には炎症細胞浸潤、浮腫、毛細血管拡張を伴います。胃ポリープの大多数を占め、加齢とともに増加します。

 

このタイプのポリープに癌が存在する頻度は0.6~2.1%とされていますが、サイズによって頻度は異なります。

 

1㎝以下では癌はほとんどみられません。

 

1~2㎝での癌の頻度は0.9%、

 

2㎝以上での癌の頻度は8%、

 

そこでポリープが1㎝未満の場合は、経過観察で良いですが、ヘリコバクター・ピロリ菌による萎縮性胃炎を背景に生じることが多いため、その場合は、除菌治療にてポリープの縮小、消失が期待できます。

 

ポリープが1㎝を超える場合には、内視鏡的切除(ポリペクトミー:粘膜切除)が勧められています。

 

 

胃底腺ポリープ

萎縮を伴わない胃体部の胃底腺領域に好発します。

 

 

腺腫性ポリープ

良性と悪性の境界病変とされます。

 

一般社団法人 日本消化器内視鏡学会のホームページに、分かり易く説明されているのでご紹介いたします。

 

http://www.jges.net/faq/faq_answer04.html

 

 

Q4.胃ポリープについて、過形成性ポリープと胃底腺ポリープの違いは何ですか?

 

1) 過形成性ポリープと胃底腺ポリープ

胃ポリープとは胃に発生する上皮性、良性、隆起性病変のことをいいます。

 

広義には腺腫、粘膜下腫瘍、癌など胃の中に隆起した病変の総称として使用されることもあります。

 

胃ポリープは過形成性ポリープ、胃底腺ポリープ、特殊型(炎症性、症候性、家族性)に分類されます。

 

一般診療で多くみられるのは過形成性ポリープ(写真1)と胃底腺ポリープ(写真2)です。それぞれの特徴を表1に示します。

 

「過形成性ポリープはヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)陽性(感染している)で萎縮性胃炎を背景に様々な病変を併発すること」、「胃底腺ポリープはH.pylori陰性で病的意義のない所見であること」は理解しておくべき大切な事項です。

 

「過形成性ポリープは悪玉、胃底腺ポリープは善玉」であり、高脂血症の「LDLコレステロールは悪玉、HDLコレステロールは善玉」と同じように考えるとよいでしょう。

 

胃X線(バリウム)検査での両者の鑑別も大切で、胃底腺ポリープを内視鏡検査で再検査することは患者さんに不利益となります。

 

今後、H.pylori陰性者や胃食道逆流症(GERD)などでプロトンポンプ阻害薬の服用者が増加すると、胃底腺ポリープに遭遇する機会も増加することが予想されます。

 

なお、胃底腺ポリープでの癌発生例も報告されていますが、その頻度はきわめて低いと考えます。

 

 

2)ポリープのフォローアップと切除の適応

過形成性ポリープも基本的には経過観察でよい病変です。まずは大きさ2cm以上で増大傾向、癌化(癌の併存)の可能性、出血のあるものを切除(ポリペクトミー)の適応と考えます。

 

抗凝固薬、抗血小板薬を服用している場合は、休薬による脳心血管イベントのリスクを比較衡量し、切除の適応を慎重に決定すべきです。よほどの貧血進行の原因でなければ、控えたほうがよいでしょう。

 

特に超高齢者では切除の適応はありません。胃底腺ポリープの処置は原則、不要です。

 

写真1

写真1

 

 

写真2

写真2

 

 

表1

表1