最新の臨床医学:6月12日(火)感染症学

<カンジタ血症・播種性カンジダ症>

 

血液疾患、薬剤、全身状態悪化など様々な原因によって、細胞性免疫が低下したり、白血球の主力である好中球が減少したり、機能障害を来すことがあります。

 

高円寺南診療所に通院中の皆様の中にも、このような状態に陥り易いリスクをもっている方々が皆無ではありません。

 

抗菌薬や抗真菌薬は濫用による耐性菌の出現、拡大が問題になっているので、処方に当たっては、原因菌のみならず薬剤感受性検査を実施し、適切な薬剤を投与することが重要であると考えられています。

 

カンジダ血症・播種性カンジダ症は、主に免疫抑制状態の患者で、広域抗菌薬に反応しない、つまり薬が効かず発熱し、進行すると全身臓器の播種性(ほかの組織や器官・臓器あるいは全身に広がる性質)病変を形成する病気が知られています。

 

 

カンジダは、たとえば高カロリー輸液など、中心静脈ライン関連血流感染症の主要な原因菌の一つです。

 

球形から卵形の酵母様真菌です。

 

真菌とは、一般にカビ、キノコ類のことで、細菌とは異なり真核細胞の一種です。大きさは通常の細菌より数倍大きいです。

 

臨床的には、カンジダ・アルビカンズの他、カンジダ・グラブラータ、カンジダ・クルセイなどの分離頻度が高いです。

 

 

カンジダ・アルビカンスは、治療薬であるフルコナゾール汎用により、フルコナゾール耐性菌が出現しています。

 

なおカンジダ・アルビカンス以外のカンジダ非アルビカンス・カンジダと総称しますが、これらもフルコナゾールに低感受性であることがあります。

 

カンジダ・グラブラータの15~25%が、フルコナゾールに低感受性を、カンジダ・クルセイはフルコナゾールに自然耐性を示します。

 

検査は

1.血液培養(他にカテーテル尖端培養も)、

2.血清診断(β-Dグルカンやマンナン抗原などの検出)、

3.播種病巣の検索(眼底検査など)を行います。

 

検査センターから血液細菌培養結果が酵母性真菌として報告された場合、カンジタ種の同定がまだなされていない状態、特に重症例、高齢者、担癌患者(癌にかかっている方)、好中球減少および最近アゾール系薬の使用歴がある場合には、カンジタ菌血症の初期治療としてエキノキャンディン系薬ミカファンギンカスポファンギン)が推奨されています。

 

これらの薬剤は、真菌の壁構成成分であるβ-Dグルカンの合成を阻害することで効果を発現します。

 

軽症例かつフルコナゾール耐性カンジタのリスクが低い場合には、初期治療としてフルコナゾールの使用も可能です。

 

カンジダが血液培養から分離された場合、すなわち、カンジダ菌血症の場合、原則として全例が治療適応となります。

 

カンジダ菌血症の場合、眼内炎合併の有無や血液培養陰性化の確認を行う必要があります。

 

臨床的に安定し、血液培養陰性化が確認されれば、エキノキャディンからフルコナゾールに変更を検討します。

 

非好中球減少カンジダ菌血症で、明らかな転移感染巣が無い場合の推奨治療期間は、血液細菌培養が陰性化し、カンジダ菌血症に起因する症状が改善してから2週間です。

 

 

このように、診断がついただけでは、治療方針を自動的に決定することはできず、経時的な観察と、計画的な検査にもとづくきめ細やかなケアを行わなければ生命を救えないところが、最近の感染症管理の特質になってきています。