< パーキンソン病(薬物治療と副作用の相克と水氣道)>
パーキンソン病は、中年以降に発症する比較的頻度の高い錐体外路系の変性疾患です。
静止時振戦、筋強剛、無動、姿勢反射障害の四症状を特徴とします。
そのため転倒し易いことに注意すべきです。
また、認知機能障害、精神症状、自律神経障害なども伴いやすいことを認識しておくことが必要です。
中脳黒質ドパミン神経細胞が高度に脱落し、線条体(被殻・尾状核)のドパミン濃度が著減することが、これらの中核症状と密接な関連を持ちます。
しかし、細胞脱落は黒質にとどまらず、中枢から末梢神経系に至る広範な神経細胞に及び、レビー小体という特徴的な細胞質封入体が観察されます。
このレビー小体の主成分の一つが特殊蛋白質であるαシヌクレインで、この物質の異常な凝集がパーキンソン病の原因であろうと考えられています。
パーキンソン病には画像診断が有用です。¹²³I-MIBG心筋シンチグラフィ―に加えて、ドパミントランスポーターSPECT(DATスキャン)が臨床応用されています。
ただし、鑑別疾患に役立つ特異的な検査はMIBG心筋シンチグラフィ―であり、心筋への取り込み集積低下所見が特異的です。
また、パーキンソン病では脳血流シンチでは異常を認めないことが知られています。
パーキンソン病の原因が、αシヌクレインの異常な凝集であるため、パーキンソン病の本質的な治療はαシヌクレインの凝集阻止ということになります。
しかし、現時点で可能な治療の基本は、線条体におけるドパミン受容体に対する有効な刺激です。
すなわち不足したドパミンの補充とドパミン代謝の改善が中心となっているに過ぎません。
また、ドパミン神経に拮抗するアセチルコリン神経の抑制も有効であり、軽症例で用いられます。
ドパ脱炭酸酵素阻害薬(DCI)はL-ドパの末梢での分解を防ぎ、脳内への移行を助けます。
しかし、通常L-ドパによる治療を開始して数年後に、痙性の強い、四肢や頭部の舞踏様の運動が現れることがあり、これをL-ドパ誘発性ジスキネジアと呼び臨床的な課題になっています。
また、パーキンソン病治療薬(抗パーキンソン病薬)の効果持続時間が減少し、薬物の血中濃度の変動とともに症状が変動する現象があり、これをWearing off (ウェアリング・オフ)と呼びます。
とくに、L-ドパ製剤を1日3~4回服用しても、次の薬剤を服用する前に効果が続かなくなることを自覚する場合をいいます。
その主たる原因は、パーキンソン病の進行とともにドパミン神経終末が減少し、ドパミンを保持できなくなることによります。
L-ドパという薬剤に、こうした症状があらわれ易いは血中濃度の半減期が短いためです。
前述したL-ドパ誘発性ジスキネジアの発症はパーキンソン病の進行期で症状の変動が明らかとなる時期にみられるようになり、ちょうどWearing offを認める時期と重なります。
パーキンソン病の症状である筋固縮・振戦の軽減のためにL-ドパ投与量を増量すると過剰になりやすく、on症状の改善は期待できますが、ジスキネジアを生じさせたり悪化させたりする可能性があります。
逆にジスキネジアを避けるためにL-ドパ投与量を制限すると、患者のQOLの維持が困難になりがちです。
Wearing offの改善のための対策には、off(薬の効果切れ)時間の短縮とoff時の症状改善の2つがあります。
COMT阻害薬は、Wearing off時間の短縮効果が期待できる薬剤です。
しかし、この製剤はジスキネジアを悪化させるため、ジスキネジアを合併する場合には減量または中止が求められます。
ドパミンアゴニストもWearing off時間の短縮効果が期待できる薬剤でき、さらに長時間作動型のドパミンアゴニストではoff時の症状改善も期待できる薬剤です。
ジスキネジア(筋強剛)を伴わない患者では有用です。
ただし、将来の運動合併症を回避する点から優れているのは、初期治療においてL-ドパ(ドパミンの前駆体)よりも効果が弱いドパミン受容体刺激薬(アゴニスト)であることが示されています。
さらに、L-ドパの急激な中断により悪性症候群が生じることにも注意を要します。
さらに、モノアミンオキシダーゼB阻害薬(MAO-B)はLドパと併用して使われていますが、これは脳内で生成されたドパミン分解酵素であるMAO-Bを抑制することでドパミン濃度を高めます。
2016年に、レボドパ・カルビドパ配合経腸溶液(デュオドーパ®)が上市されて、wearing off 減少の著名な患者に有効性を示しています。
参照:パーキンソン病治療ガイドライン2011(日本神経学会)
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