先週末の鹿児島での学会(第83回日本温泉気候物理医学会)では、高円寺南診療所および水氣道®のために有用な発表が多数ありましたので、報告します。
なお朱文字はコメントです。
【総会講演】より
○ウェアラブルセンサーで幸福度、コミュニケーション活性度、医療技術熟練度を測定する:温泉療法の客観的効果判定への応用
島岡要、三重大学大学院医学系研究科分子病態学
ウェアラブルというのは身体装着可能な、という意味です。水中でも装着可能な装置が開発されていますので、今後、水氣道の臨床効果を分析して、プログラムのさらなる改善を図るうえで参考になりました。
【シンポジウム】より
○継続的日帰り温泉利用と浴中セルフストレッチが心身にもたらす効果
後藤康彰ら、日本健康開発財団
週に1回の水氣道参加者であっても家庭での入浴療法を組み合わせれば、さらなる治療およびフィットネス効果を期待できるのは、高円寺南診療所でも実証済みです。
○慢性疲労症候群と慢性疼痛にたいする和温療法の効果
増田彰則、増田クリニック
和温療法というのは、鹿児島大学医学部の鄭忠和教授が開発した遠赤外線乾式低温サウナ療法です。
この和温療法は、室内を均等の60℃に設定した遠赤外線乾式サウナ治療室で全身を15分間温めて、サウナ出浴後さらに30分間の安静保温を追加して、最後に発汗に見合う水分を補給する治療法です。
この治療法は、すでに国際的な評価を得ています。
水氣道との相違点は、水氣道は概ね30℃の室内気温と30℃程度の水温での有酸素運動を行う方式であること、実施時間は45~90分程度であること、集団での訓練であることなどです。
水氣道の歴史は18年以上におよび和温療法より古いこと、和温療法より以前から、慢性疲労症候群や線維筋痛症をはじめとする慢性疼痛の治療に成功してきたことは誇りにできます。
しかし、残念なことに知名度低く、今後の啓発普及が必要です。鄭教授が最近出版されたご著書:なぜ微熱は体にいいのか<毛細血管が生き返る生活術>【講談社、2018】を一冊購入してきました。
鄭先生が「和温療法」というタイトルを考えていたところ、編集者から、「和温療法」は知名度が低いので本が売れないと注意され、上記のタイトルに落ち着いたというエピソードを鄭先生から直接伺いました。
なおさらのことですが、水氣道はさらなる努力が必要なようです。
【一般演題】より
○線維筋痛症患者の入浴習慣と温泉嗜好
雨宮久仁子ら、国際全人医療研究所
興味深い演題でしたが、質疑応答の時間がありませんでした。
○入浴指導により便秘が改善され減薬が可能となった高齢者の一例
井上宏貴、内田病院内科
水氣道は生涯エクササイズ用にデザインされていますので、もちろんこのような高齢者をも想定しています。超高齢社会の健康維持増進には大きな力を発揮できるという自信があります。
○当院入院患者における、水中運動で自主訓練・個別指導が股関節外転筋力に与える影響
小川貴大ら、栃木県医師会立塩原温泉病院
水氣道は、概ね4級(高等訓練生)以上の会員には、定期的に自主稽古(自主訓練)をすることを推奨しています。
また、全体訓練の他に、組別>班別>さらには必要に応じて個別指導を行っていますが、股関節外転筋力は特別に意識しなくとも自然に強化されるプログラムになっております。
この種の筋力トレーニングは、姿勢の維持・平衡機能を高め転倒リスクを軽減します。
万が一、転倒しても、水中であるため骨折などの事故を未然に防ぐことも可能であることも、水中運動のメリットの一つです。
○水中運動によって、立ち上がり動作が改善した症例
田中祈ら、栃木県医師会立塩原温泉病院
体位の変換や姿勢の矯正により、動作ばかりでなく呼吸パタンがより健康的になることも水中運動の強みでありましょう。
○各種の疼痛性疾患に関する温泉療法に関する報告の現状
小山祐介、福山市民病院麻酔科・がんペインクリニック
線維筋痛症、変形性関節症、骨粗鬆症、関節リウマチ、脊柱管狭窄症など運動器の疾患の他に、脳卒中後遺症、パーキンソン症候群、さらには癌の方など、永らく痛みや運動困難で苦しんできた患者さんのほとんどが水氣道の適応になります。
中には、手術前の方、手術後の方もいらっしゃいます。
手術予定の方も、あらかじめ水氣道で準備をしてから手術に臨むことによって、治療成績を向上させ、術後のリハビリテーションもスムーズに進行できるという利点には計り知れないメリットがあります。
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