診察室から:5月15日(火)

5月も半ばとなりました。今年は、ことの他、天候の変化が激しく、気温や湿度などが乱高下しています。

 

健康を害する方が少なくないのが懸念されます。

 

 

ところで皆様は、気象医学という医学の専門分野があるものをご存知でしょうか。

 

医学気象学という名称で日本大百科全書(ニッポニカ)で紹介されています。

 

これは人間の健康や病気に及ぼす気象の影響を扱う学問です。

 

これは生気象学の主要な分野の一つです。

 

わが国では、日本生気象学会の他、日本温泉気候物理医学会などが関連学会として活動しています。

 

 

以下は、まず日本生気象学会のHPからの紹介文ですが、サラリと読み流してみてください。

 

「生気象学」は Biometeorology(バイオメテオロロジー)を日本語訳したものであります。

 

生命とその環境を取り扱う大変グローバルな学問分野といえます。  

 

歴史的には、1955年の国際生気象学会第1回大会において

「大気の物理的、化学的環境条件が生体に及ぼす直接、間接の影響を研究する学問が生気象学である。」と定義されております。  

 

1964年にSargent IIとTrompの2人の監修のもとに発行された「A Survey of Human Biometeorology」においては、「Biometeorologyとは生態学(Ecology)の一分野であって、 植物の根の生えている土壌環境より胞子の飛んでいる大気に至るまでの自然環境の他に、 ビルディング、地下道、潜水艇、人工衛星等の人工環境をも含めての環境の物理的、 化学的条件の生体に及ぼす影響を研究する学問である」と定義しております。

 

 

次に、私が所属している日本温泉気候物理医学会をご紹介いたします。

 

私は、この学会が認定する温泉療法専門医の一人です。

 

この学会は、そもそも東京大学の物療内科(物理療法内科、現在はアレルギー・リウマチ内科に改称)が母体となって発展してきた学会です。この学会のHPのトップページには、<温泉・気候・物理医学を通じ、国民の疾病治療、予防、健康保持・増進をはかるとともに、温泉・気候・物理医学とその療法の進歩と発展を目指しております>とあります。

 

 

そもそも気象の変化による病気として代表的なのは、熱中症(高温障害)や喘息(ぜんそく)、リウマチ、花粉症、皮膚癌(がん)などがあります。

 

その他にも神経痛や片頭痛などの疼痛性疾患、それからうつ病などメンタルの病気もあります。

 

東大の物療内科(アレルギー・リウマチ科)と温泉・気候・物理医学との繋がりは、そのまま、高円寺南診療所の専門領域にも関連していることがご理解いただけると思います。

 

 

今週の週末は、第83回日本温泉気候物理医学会があるため、鹿児島に出張となります。

 

2000年以来、地道な活動を続けている水氣道®も、温泉医学・気象/気候医学・鍼灸などの物理医学と密接なつながりを確認しながら発展してきました。

 

鹿児島から、学会の報告をする予定です。

 

 

 

参考文献: 『日本生気象学会『生気象学の事典』(1992・朝倉書店)

 

吉野正敏・福岡義隆著『医学気象予報――バイオウェザー・病気と天気の不思議な関係』(2002・角川書店) 

 

村山貢司著『病は気象から』(2003・実業之日本社) 

 

福岡義隆著『健康と気象』(2008・成山堂書店) 

 

神山恵三著『生気象学入門 気象と人間』精選復刻(紀伊國屋新書) 

 

加賀美雅弘著『気象で読む身体』(講談社現代新書)』