最新の臨床医学5月12日 < 急性胆管炎・胆嚢炎>

抗菌剤の使用については、耐性菌の出現等の問題などが国際化しています。

 

しかし、初期の段階で、躊躇せずに、しかも可能な限り適切に使用しなければならない疾患も数多く残されています。

 

その代表の一つが、肝・胆道感染症、とりわけ急性胆管炎や胆嚢炎です。

 

 

 

肝・胆道感染症に関する治療総論

 

肝・胆道感染症は、主に大腸菌、肺炎球菌、エンテロバクター属、緑膿菌などの他、バクテロイデス属などの単独または複数感染が最も多く、それが臨床上の問題点になっています。

 

上記を念頭にセファゾリン(CEZ)、セフメタゾール(CMZ)、セフォチアム(CTM)、ピペラシリン(PIPC)、タゾバクタム・ピペラシリン(TAZ/PIPC)、スルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)、ラモタキセフ(LMOX)、メロペネム(MEPM)、ドリペネム(DRPM)などの抗菌薬のうちから適切なものを選択して投与することを考慮します。

 

 

軽症例では、ニューキノロン系薬などの経口投与で済むことがほとんどです。

 

重症例では、大腸菌などのグラム陰性菌に有効なアミノグリコシド系薬を併用することがあります。

 

嫌気性菌が疑われる場合には、これに感受性のある薬剤を選択します。

 

なお、効果的な治療のためにはドレナージが必要となりますが、さらに手術の適応も常に考慮しておく必要があります。

 

胆嚢炎や胆管炎の多くは、腸内細菌の上行感染であり、グラム陰性桿菌(大腸菌、クレブジエラ属、緑膿菌)、腸球菌、嫌気性菌(クロストリジウム属、バクテロイデス属)などが原因菌となります。

 

 

 

肝・胆道感染症に関する治療各論

 

1)胆管炎では診断がつき次第、速やかに抗菌薬を投与します。

 

その際は、胆汁移行性が良く、抗菌スペクトラムが広い感受性のある抗菌薬を選択します。

 

ただし、耐性菌の選択に留意し感受性検査を速やかに行います。

 

軽症・中等症例はセフェム系薬、ニューキノロン系薬にクリンダマイシンの併用が推奨されます。

 

重症例では複合筋・耐性菌感染の可能性が高く、幅広い抗菌スペクトラムをもつペニシリン系薬(タゾバクタム・ピペラシリン)やカルバペネム系薬が、代替薬にはセフェム系薬やニューキノロン系薬にクリンダマイシンを加えます。

 

腸球菌に対してバンコマイシンの併用を考慮します。

 

ただし、海外ではメトロニダゾール静注が嫌気性菌に対する第一選択薬です。

 

日本での今後の動向が注目されます。

 

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)は、必要な検査ですが、検査の操作により胆道感染症を増悪させてしまうリスクがあります。

 

これはいわば医原性の感染症ですが、それに対する予防抗菌薬としてはセフェム系薬とペニシリン系薬が推奨されています

 

<参照:急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2013(日本胆道学会ほか)>。

 

中等症以上の症例では、胆嚢ドレナージを施行します。

 

 

2)急性胆嚢炎では原則、胆のう摘出術を前提とした初期治療(全身状態の改善)が必要です。

 

絶食・十分な輸液と電解質の補正・鎮痛薬および抗菌薬投与を行いつつ、手術や緊急ドレナージ術の適応を考慮します。

 

抗菌薬の選択はほぼ胆管炎と同様に、重症度に応じて行います。

 

 

参考:Tokyo Guidelines for Acute Cholangitis and Cholecystitis(厚生労働科学研究班、2013