最新の臨床医学:5月9日 <動脈硬化性疾患(その1)>

今回は、現代の生活習慣病を考えるうえで最も根本的な病態の一つについて振り返ってみることにしました。

 

診療指針の基本は「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017」に準じます。そこでは動脈硬化性疾患のリスクカテゴリーの分類が提示されています。

 

この分類に応じて脂質管理目標を目指し、原則としてスタチンを使用します。

 

特にLDLコレステロールのレベルが重視されています。

 

いずれも予防目的なので、生活習慣管理が重要です。

 

しかし、薬物療法を行う場合には、筋障害(筋痛、筋力低下)、肝障害、CPK上昇などの副作用に対し、患者-医師の相互で確認しながら治療を継続していくことが必要です。

 

なお、このガイドラインでは従来のものが改訂されています。

 

 

そこで、改訂のポイントをまとめてみました。

 

1)高リスク群の評価

 

動脈硬化リスクを広く集めようという観点から,リスクの評価は吹田研究を採用し,10年間の冠動脈疾患の発症を予測するツールが作成されました。

 

その結果、高尿酸血症睡眠時無呼吸症候群もリスクとして考慮すべき病態として取りあげました。

 

また,冠動脈疾患の既往糖尿病脳血管障害は,その管理状態や合併症の有無,重積する危険因子により,より積極的な加療が必要となる症例が存在する病態であるため、どのようなケースにおいてさらに強化した管理を必要とするか,を詳述しています。

 

たとえば高中性脂肪血症も血中TG(中性脂肪)が500mg/dL以上であれば重度高TG血症です。

 

その場合は、急性膵炎の予防を考慮すべきなので、フィブラートを積極的に検討します。

 

高LDL-コレステロール、高TG血症が併存する場合は、まずスタチンを優先し、非HDL-コレステロールを指標にして管理します。

 

 

2)二次予防における高リスク病態での厳格なLDL-コレステロールの管理

 

家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)や急性冠症候群など,二次予防での高リスク病態においては,現在の低比重リポ蛋白(low-density lipoprotein:LDL)コレステロールの基準を100mg/dL未満よりさらに厳格な管理、すなわち70mg/dL未満を提言しました。

 

二次予防あるいは低下させるべきLDL-コレステロール量の落差が30mg/dL以上の場合、ストロングスタチンが必要であることが多いです。

 

 

3)家族性高コレステロール血症の記載の拡充

 

家族性高脂血症は、遺伝性の脂質異常症ですが、ヘテロタイプの症例であれば、日常遭遇することも少なくないため、見落としに注意を要します。

 

なお新薬の登場,小児FHへのスタチンの適応拡大などに伴い,家族性高コレステロール血症の診断・治療の記載を詳細に行い,治療法に関してはフローチャートを用いていることを推奨しています。

 

 

まとめ 

「最新の臨床医学」というタイトルで、主に内科学の各専門領域の最新の動向を把握するうえで、「診療ガイドライン」は最重要の情報源であるといえるでしょう。

 

ただし、忘れてならない基本が生活習慣管理にはじまり、食事、運動、および心理社会的側面でのマネージメントにあります。

 

こうした側面が無視されているわけではないのですが、注目度が低下しつつあることは否めないように思います。

 

日常診療において大切なことは、患者さん自身のセルフケアをサポートすることにあります。

 

その基本を忘れないように精進して行きたいと思います。