わが国の悪性リンパ腫の罹患率は人口10万人当たり約13で、年々増加の傾向があります。
男女比は約3:2と男性にやや多く、65~74歳が発症のピークです。
悪性リンパ腫は、血液細胞に由来するがんの1つで、白血球の1種であるリンパ球ががん化した病気です。
全身のいずれの場所にも病変が発生する可能性があり、多くの場合は頸部(けいぶ)、 腋窩(えきか)、 鼠径(そけい)などのリンパ節の腫(は)れが起こりますが、消化管、眼窩(がんか:眼球が入っている骨のくぼみ)、肺、脳などリンパ節以外の臓器にも発生することがあります。
発症の原因はまだ明らかではありませんが、細胞内の遺伝子に変異が加わり、がん遺伝子が活性化することで発症すると考えられています。
また、一部にはウイルス感染症が関係することや、免疫不全者に多いことが知られています。
組織学的にホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別されますが、90%以上がが非ホジキンリンパ腫です。
近年腫瘍領域で開発されている薬剤の多くは分子標的治療薬です。
腫瘍に特異的な分子を標的とするため、腫瘍に特異的に作用することが期待されています。
従来の抗悪性腫瘍薬でみられるような脱毛や悪心・嘔吐などの有害事象は比較的軽いことが多いですが、一方で、下痢や皮膚障害などの有害事象が強く現れたり、間質性肺炎や銅静脈血栓症などの重篤な有害事象が生じたりすることがあります。
悪性リンパ腫の治療は病型により異なります。
CD20陽性のB細胞リンパ腫では、リツキシマブを単剤もしくは化学療法との併用で用います。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫〔DLBCL〕では、R-CHOP療法(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン)が治癒を目指せる標準療法です。
濾胞性リンパ腫(FL)
高腫瘍量の場合、リツキシマブ+ベンダムスチンやR-CHOP療法などが行われます。
奏功例ではリツキシマブ単独療法が選択肢となります。
低腫瘍量の場合、無治療経過観察やリツキシマブ単剤療法が選択肢となります。
節外性NK/T細胞リンパ腫では、アントラサイクリン系薬を含まない多剤併用化学療法が行われます。
殺細胞性抗悪性腫瘍薬
アルキル化薬:DNAをアルキル化してDNA複製を阻害して細胞死をもたらす
ニトロソウレア類のラニムスチン(MCNU)が用いられることがあるが遅発性骨髄抑制があります。その他にはプロカルカジンがあります。
代謝拮抗薬:核酸やタンパク合成過程の代謝物と類似構造をもつ化合物で、核酸合成を阻害するなど細胞を傷害する
ピリミジン代謝拮抗薬:GEMが用いられます。
プリン代謝拮抗薬:フルダラビンは低悪性度非ホジキンリンパ腫に、クラドリビンは低悪性度B細胞腫に適応があります。
白金製剤:DNA鎖内または鎖間結合あるいはDNA蛋白結合を作ってDNA合成を阻害
シスプラチン(CDDP)が代表的薬剤です。
トポイソメラーゼ阻害薬:トポイソメラーゼはDNAに一時的に切れ目を入れてDNA鎖のからまり数を変える酵素です。
1)トポイソメラーゼⅠ(一本鎖DNAに作用)
イリノテカン(CPT-11)骨髄抑制や高度の下痢に注意
2)トポイソメラーゼⅡ(二本鎖DNAに作用)
エトポシド
分子標的治療薬
分子標的治療薬は、従来の抗悪性腫瘍薬と異なり、癌の発生や増殖に関わり、癌細胞にとっては「アキレス腱」ともいえるような分子を標的とすることで抗腫瘍効果を発揮する薬剤です。
予め分子標的を特定し、それに作用するように薬剤が合成されます。
剤型から、抗体製剤(主に注射薬)、小分子化合物(主に内服薬)の二つに分けられることもあります。
抗体製剤
放射線同位元素標識抗体(イブリツモマブ チウキセタン)
CD20に対するマウスモノクローナル抗体にラジオアイソトープ(⁹⁰Y)を結合したもの
CD20陽性低悪性度B細胞リンパ腫とマントル細胞リンパ腫に対して有効だが、晩発性骨髄抑制に注意する。
悪性リンパ腫の予後も、病型が大きく関与します。
しかし、わが国の統計データはありません。
ただし、ホジキンリンパ腫・非ホジキンリンパ腫全体での5年生存率で比較すると、欧米のデータとは異なり、日本ではホジキンリンパ腫は非ホジキンリンパ腫より5年生存率の成績が不良でした。
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