最新の臨床医学:5月3日<遅発性ウイルス感染症(1)>

ウイルス感染症のうち感染後長い潜伏期を経て発症し進行性の経過を示すものを言います。

 

変性疾患様の発症の仕方をし、慢性進行性の経過により、死の転帰をとります。

 

亜急性硬化性全脳炎進行性多層性白質脳症プリオン病クロイツフェルト‐ヤコブ病などがあります。

 

 

今回は、麻疹の流行などとの関連で注目すべき亜急性硬化性全脳炎(SSPEおよび原因ウィルス抗体陽性率の高い進行性多層性白質脳症(PMLについて紹介します。

 

 

亜急性硬化性全脳炎(SSPEは、麻疹罹患後長期間(平均6~8年)経ってから発症し、ウイルスが脳細胞に潜伏持続感染することにより起こります。

 

高度弱毒化ワクチン接種が行われるようになってからは発生数は著減しましたが、近年のワクチン接種率低下に伴い、増加傾向にあります。

 

小児(18歳以下がほとんどで、ピークは6~8歳)に好発します。麻疹感染後または麻疹ワクチン接種後に3~10年の潜伏期間を経て発症します。

 

発症から死亡までの期間は平均6年と伸びていますが、未だ予後不良です。

 

麻疹ワクチンの接種でもSSPEは起こりえますが、自然感染と比較数と発症率は極めて低いです。

 

診断には髄液所見(麻疹抗体価↑↑)が最も重要です。

 

 

進行性多層性白質脳症(PMLは、宿主の免疫機能低下(HIV感染症、悪性腫瘍、自己免疫疾患、ステロイドの投与など)により、JCウイルスが乏突起膠細胞(オリゴデンドログリア)に感染し、脱髄を生じる病態です。

 

腎臓に無症候性に持続感染していたJCウイルスが免疫能の低下に伴い病原性の強いウイルスに変異し、脳に感染してPMLを来します。

 

発症は25~77歳(平均53歳)で発症します。近年では特にAIDSに合併する頻度が最も高く、他にホジキン病、白血病などに合併します。

 

有効な治療法はありません。

 

ナタリズマブ使用患者での進行性多巣性白質脳症(PML)の多発は良く知られています。

 

その他、最近ではフィンゴリモド、フマル酸ジメチルでも報告が続いています。

 

JCウイルスは成人の70%以上が感染していて、JCウイルス抗体陽性率の高いわが国では、十分なモニタリングが必要です。