診察室から:4月24日 インフルエンザ罹患体験記

インフルエンザに罹って(H.Aさん48歳)

 

第0病日:2/8(木)高円寺南診療所受診。肩こり(軽度)、腹部膨満感(軽度)の他、特記すべきことはありませんでした。

 

(職場でインフルエンザのワクチンを接種していただく予定でしたが、今年に限って未接種でした。)

 

アレルギー性鼻炎の治療薬をはじめ、朝:葛根湯、夕:柴胡桂枝乾姜湯などを処方しました。

 

 

第1病日:2/9(金)仕事を終え、3連休何しようかなと思いながら、途中ケーキなども買い、帰宅の途に付いていました。

 

帰宅後、夕食を食べながらなんとなく食欲が無い上に、体の異変を感じていましたが、入浴しくつろいだ後、就寝しました。

 

夜半に目が覚め、体の節々が痛いことがはっきり感じ取れ異変が大きくなっていることに気づきました。

 

職場でインフルエンザが流行し、罹っていなかったのが自分だけであったことを考えると、インフルエンザだろうなと直感的に思いました。

 

水氣道を続けていると、心身の異変に気づきやすくなります。

 

 

第2病日:2/10(土)起床後、朝食を取ったのち早速近くの診療所へ行きました。

 

待合室で熱を測ったら37.6℃あり、おそらくこの後検査キットで検査してインフルエンザと診断されるんだろうなと思っていました。

 

自分の診察の順番が廻ってきて、案の定検査キットで検査を実施し、その結果は予想に反して陰性でした。

 

その時の診療所の医者の診断は

 

熱が出てから、24時間経たないとインフルエンザかどうか検査結果に表れてこないため、診断は出来ない。よって今日は解熱剤だけ渡すから明日また診察を受けてくれというものでした。但し、明日は日曜日のため、うちも含めほとんどの診療所は休みのため救急医療に罹ってくれとのことでした。(半笑いで)」

 

しょうがないと思い、薬局で解熱剤を受け取り、帰宅しました。

 

 

H.Aさんの近所の診療所のドクターは、インフルエンザ診断キットの限界をご存じであり、それをH.Aさんにきちんと伝えていることは評価できると思います。おそらく、インフルエンザの可能性あり、と判断されていたのではないでしょうか。

 

この段階で解熱剤のみの処方、というのは完全な誤りではありませんが、必要な発熱を抑え込むことでウイルス感染をかえって長引かせ、ウイルスを周囲にばら撒いてしまうことになるので残念です。

 

この段階で検査キットを用いないで、臨床判断のみで抗インフルエンザ治療薬を即時に開始していれば、H.Aさんの経過は順調だったものと思われます。

 

インフルエンザの診断は、検査キットによる迅速診断によらなければならない、とする思い込みは是正していただきたいと思います。

 

検査キットで陰性であるにもかかわらず、医師がインフルエンザと診断したとすれば、いかがでしょうか。

 

「それでは何のために検査したのか?」という疑問とともに不信感がもたらされるのではないでしょうか。

 

また、何も処方されないとしたら不満を表明する方が少なくないのではないでしょうか。

 

帰宅後自宅では隔離され、すぐに寝たのですが、寝ながら明らかにどんどん調子が悪くなっているのを感じながらふと次のような疑問が湧いてきました。

 

「今日受けた診療所では、検査キットで検査し、結果がでず判断できないから、解熱剤だけ渡して帰ってくださいという診断だったけど、このまま明日まで養生しても良くなるどころか悪化してそうだけど、こういう流行性感冒などは初期の対応が重要なのではないのかな」というものです。

 

今の医療はこんな感じなのかなと思いつつ養生することに努めました。

 

 

H.Aさんは、初期対応の重要性に気づいておいでです。しかし、もっと大切なのは、インフルエンザワクチンを例年通り、早い段階で接種すべきであったことです。

 

2015/2016年シーズンからは国内におけるインフルエンザワクチンはバージョンアップし、それまでは「3価ワクチン」だったものが「4価ワクチン」となりました。

 

「3価」「4価」とは、それぞれワクチンの中に入っている「株」の種類の数を表します。3価の場合は2種類のA型に対するもの、1種類のB型に対するものが入っていましたが、これが4価になって2種類のA型、2種類のB型に対応するものになりました。

 

つまり、同じワクチンでもカバーできる範囲が広がったわけです

 

また、特に発熱直後の場合、検査キットを実施しないという方針も尊重されるべきではないでしょうか。

 

高円寺南診療所では、ホーム・ページで迅速検査キットによるインフルエンザ検査を行っていない旨を表明していますが、随分と時代遅れで低レベルの医療機関であると判断されることもあり、残念な思いをすることがあります。

 

ところで、流行性感冒(インフルエンザ感染症)は、初期対応が重要であることは事実です。

 

漢方では太陽傷寒といい、麻黄湯桂枝湯を処方することが多いです。

 

麻黄湯は初期のインフルエンザで、悪寒(寒気)、発熱、頭痛、腰痛があり、自然に発汗しない場合に良く効きます。

 

これに対して桂枝湯は体力が衰えたときの風邪やインフルエンザの初期に用います。

 

 

第3病日:2/11(日)起床後、良くなっていることはなく、熱も解熱剤が切れれば36.7℃あり昨日より明らかに調子悪くなっていました。

 

早速救急医療に出向き診察を受けることにしました。そこでも検査キットにて検査し、医師からインフルエンザB型ですと診断されました。

 

(内心、こんなに調子悪いんだからそりゃそうだろうな)

 

「会社に提出するための診断書を書いてほしいとお願いすると、今日は救急だから書けない。ほしいなら週明け火曜日に来てくれ」というものでした。

 

診察後薬局で、薬を受け取り(吸引用治療薬)帰宅し、早速薬を服用し、就寝することにしました。

 

 

インフルエンザは例年、2月中旬くらいまではA型が主流で、バレンタインデーを過ぎてからB型が出始める傾向が強いのですが、今年に限っては、「1月中からB型に罹患する人が多い」という特徴がありました。

 

今年のインフルエンザの特徴は「A型とB型が同時に流行した」ことでした。

 

インフルエンザB型の特徴を記載します。

 

発熱に関しては、A型と同様に高熱が出るケースと、熱が出ないケースがあります(37℃台の方もたくさんいます)。

 

一方で、胃腸炎のような症状を訴える人が特徴です。

 

この時期、ノロウイルス感染症のような急性胃腸炎(感染性)が見られることもあり、しばしば鑑別が難しいケースも見られますが、

 

感染性胃腸炎の場合は1-2日程度で症状や発熱などが落ち着いてきますが、インフルエンザB型の場合は3日以上症状が続くこともあります。

 

熱はなくても立派な「インフルエンザ感染症」ですので、周囲の方に感染を広げてしまうリスクは変わりません。

 

発症早期であれば、インフルエンザウイルスの増殖を抑える薬(タミフル®、リレンザ®、イナビル®等)を服用します。

 

インフルエンザはA型でもB型でも、治療に用いる抗インフルエンザ治療薬の使い分けはありません。

 

A型インフルエンザのみ有効とされたアマンタジンは、耐性化が進んだため使われていません。

 

また、近年、オセルタミビル(タミフル®)とベラミビル(ラピアクタ®)との同時に交叉耐性を示すウイルス株が報告されています。

 

そこで吸入薬ザナミビル(リレンザ®)あるいはラニナミビル(イナビル®)の処方選択は一定の根拠はあると思います。

 

 

第4病日:2/12(月)熱36.5℃(解熱剤が切れると熱が出てくる上に、耳の後ろがひどく痛む)ひたすら睡眠をとり養生に努めました。

 

水分補給と休息、が特効薬です。

 

 

第5病日:2/13(火)診断書をもらいに、救急で訪れた病院を訪れました。

 

受付で「外出禁止の期間なのに何で来たの?」と言われ愕然としつつ、診断書をもらうための具体的な話をし、こちら側の明記事項を説明したが

 

希望している内容を書けないということで、診断書をもらうことをあきらめることにしました。

 

 

第6・7病日:2/14(水)、2/15(木)ひたすら睡眠を取り養生した結果、耳の後ろのひどい痛みと発熱はようやく治まりました。

 

 

第8病日:2/16(金)職場復帰したが、仕事しながら全然調子が悪く明日土曜日(休日)でよかったと思いながら、高円寺南診療所へ行き、先生の診察を受け、インフルエンザ後の体調回復の薬を処方してもらいました。

 

H.Aさんの血圧132/83mmHg、脈拍数92/分、動脈血酸素飽和度98%で概ね正常でしたが、体温は38.3℃であり、十分な解熱が得られていませんでした。

 

竹筎温胆湯(チクジョウンタントウ)という漢方薬を処方しました。この漢方薬は、インフルエンザの回復期に熱が長引いて、気分がさっぱりしないような場合に処方します。

 

H.Aさんは消化管がデリケートでアレルギー性鼻炎をはじめアレルギー体質でもあるため、適切な初期対応が遅れると、それ以上に回復が遅れる傾向があります。

 

・・・・・・・・・・・・

 

第18病日:それから体が本調子になるまでに10日程度を要したことは、インフルエンザはやはり普通の風邪とは違うと思い知らされたところです。

 

 

最後に

今回インフルエンザに罹って思うことは、やはり最初の診察で初期の対応が取れていれば、もっと軽く済んだのにと思いました。

 

また私の勝手な主観ながらこの初期の対応の遅れが、大流行につながっているとも感じました。

 

 

H.Aさんは、水氣道®やカウンセリングなどにより、セルフ・コントロール能力がかつてと比べて格段に進歩しています。

しかし、そこで油断が生じないように養生と鍛錬を続けていくことが必要になります。

今回の苦い経験によって、普段の健康の維持・増進や体質改善、また予防医学の大切さをさらに実感されたようにお見受けします。

それから、現代医療の問題点についても、ご自分の実際の体験を元に、貴重な所感を述べていらっしゃいます。

 

H.Aさんの体験記は、貴重な報告書であり、多くの皆様方の参考になるものと考えております。