最新の臨床医学:4月18日 <高血圧(その1)自覚の乏しい国民病>

高血圧は、心血管病(脳卒中および心疾患)の最大の危険因子です。

 

現在、わが国における高血圧有病者数は約4,300万人と推定されています。

 

今後は人口の高齢化に伴い、有病者数はさらに増加することが予想されます。

 

 

一般的に高血圧のみでは特異的な症状を伴わないので血圧測定の習慣のない方には気づかれない病気です。

 

重篤な心血管イベントを発症したときや、健診や予防接種、感冒などによる受診の際に、偶発的に気付かれることが多いです。

 

 

わが国では日本高血圧学会が2014年4月に独自の高血圧ガイドライン(JSH2014)を公表しました。

 

高血圧は心血管病の最大の危険因子であるばかりでなく、血圧水準と心血管病リスクの間には、段階的、連続的な正の相関があります。

 

理想的な血圧(至適血圧)は診察室血圧で120/80mmHg未満であり、リスクは最小です。

 

全死亡者のうち約20%が至適血圧を超える血圧によって発生するものと推定されています。

 

診察室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合、家庭血圧値を優先します。

 

 

家庭血圧測定の方法と評価について

 

(日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン、2014)より

 

測定環境(詳細はプリントを差し上げます)

 

測定条件(詳細はプリントを差し上げます)

 

測定回数:1機会原則2回測定し、その平均をとります

 

評価の対象:朝測定値5日(5回)以上の平均、晩測定値5日(5回)以上の平均

 

評価:高血圧とは、朝・晩それぞれの平均値≧135/85mmHg

   正常域血圧とは、朝・晩それぞれの平均値<135/85mmHg

 

 

高血圧について高円寺南診療所で説明し、推奨していること

 

①高血圧は代表的な慢性疾患の一つです。

生涯にわたり病気と付き合っていくという自覚をもって生活することが大切です。

 

②家庭血圧計による自己血圧測定を施行し、所定の血圧手帳に記録し、受診の際に医師に報告していただきます。

 

③治療の基本は、塩分制限が最も重要です。それと同時に、定期的な有酸素運動をすることが効果的です。

現在行っている運動療法による降圧効果が十分でない方には、水氣道®をお勧めします。確実な降圧効果をもたらします。

なお、ヴォイストレーニングや歌唱など聖楽院で行っているレッスンは、有酸素運動と同等の降圧効果が期待できます。

 

④医師の指示通りの服薬の順守がとりわけ重要です。

自己判断で内服調整することは禁物です。

血圧が安定しない場合は、速やかに医師に相談してください。

 

 

高円寺南診療所から他の専門病院に紹介する事例について

 

高円寺南診療所の院内対応能力の向上に伴い、高血圧専門医をはじめ循環器内科に紹介する事例は減少しています。

 

しかし、今後とも腎臓内科、内分泌内科などへの紹介は必要に応じて行う必要があります。

 

逆に、妊娠中の患者さんをはじめ産科医からの相談を受けることは増えてきました。

 

①二次性高血圧が疑われる症例・・・鑑別能力向上のため減少

 

②治療抵抗性高血圧・・・治療成績向上のため減少

 

③妊娠高血圧・・・相談件数増加

 

④高血圧緊急性・切迫性・・・症例数減少傾向

 

⑤ACE阻害薬 / ARB治療で腎機能が悪化した症例・・・少量慎重投与によりまれ

 

⑥腎障害、心不全、脳卒中合併高血圧における治療方針の確認・・・精密検査目的で紹介

 

⑦降圧薬の副作用が疑われる場合・・・降圧剤の種類を変えることで初期対応します

 

➇血圧の変動が大きい症例・・・生活習慣の他、心理・社会的環境因子を検討します

 

⑨白衣高血圧の判断に迷う症例・・・白衣高血圧は自律訓練法にて改善傾向を示します

 

⑩妊娠高血圧の判断に迷う症例・・・産科医と連携して診断・治療に当たります