最新の臨床医学:循環器病学 <ST上昇型急性冠症候群>

急性冠症候群(ACS)という病名は、比較的最近のものであり、不安定狭心症、急性心筋梗塞などを総称して呼ぶことが多いです。

 

狭心症のなかには、最近発症あるいは再発したものであって、経過中重症型(安静時や軽度の労作でも誘発される、頻発する、持続が20分以上、冷汗、吐き気などの随伴症状)に増悪するものがあり、これを不安定型と呼びます。

 

不安定狭心症は①新規発症の狭心症、②症状悪化型の狭心症、③安静時狭心症に分類されます。

 

これらには、急性心筋梗塞の前駆状態および突然死に移行し易い狭心症が含まれます。

 

このように不安定狭心症から急性心筋梗塞を発症する病態は同一と理解され、急性冠症候群と呼ばれます。

 

 

急性冠症候群の原因となる冠動脈プラークの特徴は、狭窄度は軽度で、プラーク内に資質が沈着(アテローマ)し、マクロファージなどの浸潤が著明で、プラーク被膜が薄いことです。

 

このような脆弱プラークを安定化することが冠動脈疾患患者の予後を改善することになります。

 

このように、狭心症の治療は、高度狭窄病変による狭心症発作を予防すること以外に、普遍的に存在する内膜肥厚内のプラークを安定化させて心筋梗塞への移行を阻止することも目標になります。

 

 

抗血小板薬:クロピドグレル、プラスグレル及びチカグレロル(ブリリンタ®)はインターベンションが考慮される急性冠症候群や待機的PCIが適用される安定狭心症/陳旧性心筋梗塞/ST上昇心筋梗塞に対して使われます。

 

抗凝固薬:急性冠症候群の発症と病態の進展に関与します。血栓形成を阻止する目的でワルファリンなどの抗凝固療法が行われます。

 

エゼミチブ:スタチンとの併用によりスタチン単独治療より有意に心血管イベント抑制効果を示し、スタチン以外の薬剤でもより強力にLDLコレステロールを低下させます。 

 

 

薬剤溶出性ステント(DES)治療後の2剤併用抗血小板療法(DAPT)は、急性冠症候群(ACSでは少なくとも1年間、安定冠動脈新患では6カ月間継続すします。

 

 

循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年版改訂版)(日本循環器学会ほか)

 

心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)(日本循環器病学会)

 

ST上昇型急性心筋梗塞に関するガイドライン(2013年改訂版)(日本循環器病学会)

 

2016年に抗血小板薬チカグレロル(ブリリンタ®)が承認されました。