睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、10秒間以上の呼吸停止(無呼吸)や低呼吸が睡眠中に頻回に生じるものす。
そのいくつかはノンレム期にも出現し、昼間の過眠、集中力の減退や夜間の不眠が生じる病態を言います。
患者さんの受診動機としては、パートナーや同室者から指摘された睡眠中のいびきや無呼吸が最も多く、本人の自覚症状ではありません。
受診者本人は無呼吸に気づいておらず、自覚症状として最も多いのは日中の過剰な眠気ですが、これを感じていない受診者は不眠のみを訴えます。
また、逆に眠気あるいは睡眠障害を訴えても睡眠時無呼吸が見逃され、睡眠薬等を投与されることによってさらに増悪するケースもみられます。
SASの確定診断には終夜睡眠ポリグラフィ検査(ポリソムノグラフィ)が最も有用で必須です。
これは睡眠中の脳波、筋電図、眼電図、換気モニター(鼻・口の気流、いびき音、胸・腹部の換気運動)、パルスオキシメーター(SpO₂)、心電図などの様々な生理機能を連続してモニターし、SASの型、無呼吸/低呼吸、睡眠パターンなどを評価します。
一般には無呼吸や低呼吸の回数が睡眠1時間あたり5以上の場合、あるいは7時間の睡眠中に30回以上の場合に睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断します。
また、最近では、スクリーニング検査には、在宅で簡易睡眠時呼吸モニター(携帯型)も行われます。
閉塞型と中枢型に分けられますが、そのほとんどは閉塞型です。両者の混合型もあります。
閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、睡眠時に仰臥位をとることで舌根部が沈下し、上気道が狭小化します。
上気道が閉塞することによる無呼吸では、その無呼吸中に呼吸努力、すなわち胸部や腹部の呼吸運動は観察されます。
これに対して、中枢型では呼吸努力が消失するという特徴があります。
SASの原因で一番多いのは、成人の場合は肥満です。生活歴では飲酒歴が問題となります。
ただし、わが国において閉塞型患者の約30%が肥満を伴わず、欧米より肥満を伴わない患者が多いです。
この理由として、頭蓋顔面骨の形態異常の上気道への関与が示唆されています。
甲状腺機能低下症(橋本病など)による粘液水腫に伴う巨舌で、閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が生じるケースもあります。
軽症から中等症のSAS患者の不眠治療では、睡眠薬を服用しても呼吸状態は悪化しないとの報告があります。
特にメラトニン受容体作動薬ラメルテオンの安全性が優れています。
眠気を自覚症状として感じていない人はあまり苦痛を感じていないため、治療としての鼻マスク式持続陽圧呼吸<nCPAP>の導入および継続が進まないことが多いようです。
これに対して、重症例では睡眠薬の影響を否定できないため、低流量の酸素投与と持続陽圧呼吸療法(CPAP)などで十分にSASの管理をしたうえでの睡眠薬等与が望ましいです。
SAS患者においてCPAP治療初期に睡眠薬を併用すると、その後の長期的なアドヒアランスの向上が期待できます。
通常この場合は、マウスピース使用、鼻腔持続陽圧呼吸療法、アセタゾラミドを用いて腎からの重炭酸イオン排泄を促進し、代謝性に呼吸を促進させるなどの方法があります。
本症候群の閉塞型に対しては持続陽圧呼吸療法(CPAP)の導入が優先されます。
呼吸刺激薬は呼吸中枢を直接(中枢性呼吸刺激薬)あるいは間接的に末梢化学受容体を介して(末梢性呼吸刺激薬)を刺激することにより、換気量を増加させることを目的に用いられます。
また閉塞型の場合は口蓋垂軟口蓋形成術(UPPP)や口腔装置(ORAP)なども用いられます。
睡眠時無呼吸症候群に適応がある炭酸脱水素酵素阻害薬であるアセタゾラミド(ダイアモックス®)は腎尿細管でのHCO₃⁻の再吸収を抑制して代謝性アシドーシスをもたらし、pHを低下させることによって化学受容体を介して換気を刺激し呼吸を促進します。ただしその効果は限定的です。
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