最新の臨床医学:消化器・内分泌・代謝病学<機能性ディスペプシア(FD)>

機能性ディスペプシア(FD)のほとんどは日本では慢性胃炎と診断されてきました。

 

欧米では内視鏡検査などで潰瘍を認めない患者で、胃もたれ、胃痛などを訴える場合non-ulcer dyspepsia(NUD)「潰瘍を伴わない消化不良」という診断名が用いられてきました。

 

これは臨床的には症状を伴う慢性胃炎に相当します。最近ではこのNUDが機能性ディスペプシア(FDと訳されるようになってきました。

 

 

この病気は、典型的な消化器心身症です。つまり、心療内科専門医にとっては中心的な対象疾患の一つです。つまり、高円寺南診療所の心療内科が専門的に対応する病気の一つです。

 

残念ながら、いまだに、心療内科と精神科を混同している方が多いのですが、この病気の解説を読んでいただければ、理解の助けになるのではないかと期待しております。

 

 

2016年Rome委員会より改訂RomeⅣが発表され、機能性消化管障害の分類と取扱いが注目されています。

 

診断基準は、つらいと感じる症状によります。

 

①食後のもたれ感、②早期飽満感、③心窩部痛、④心窩部灼熱感、

 

これらのうち1つ、または2つがあり、かつ器質的疾患を認めないものをFDとしました。

 

 

FDの原因として、心理的ストレスや物理的ストレスが考えられています。

 

そして胃の症状と心理的症状が複雑に絡み合ってFDの症状を呈しているとされています。

 

すなわち、本症例では、消化管症状の他に、全身倦怠感、冷え、立ちくらみ、背部痛、肩こりなど種々の症状を訴えることが多いです。

 

 

治療の基本は、食事時間やその内容の確認に始まります。

 

水氣道®などの適切な運動など生活習慣全般の改善を指導します。

 

これで改善がみられない場合は、初期治療(消化管運動機能改善薬:エビデンスレベルA)、さらに症例によっては二次的治療(漢方薬、抗うつ薬、抗不安薬)を行います。

 

高円寺南診療所では、漢方薬を二次的治療ではなく、一次的治療の段階で処方しています。

 

 

治療成績では42~43%でプラシーボ効果が見られ、心理的要因が非常に大きいことが明らかです。

 

またその病原機序の一つとして、胃運動機能障害が報告されています。

 

機能性ディスペプシアの診断基準(RomeⅣ、2016

 

 

警告徴候(体重減少、嘔吐など)を示すFDにおいて、内視鏡的に胃炎を認める場合はH.pyloriの診断と治療を行います。

 

除菌後に症状が改善するものをH.pylori関連ディスペプシアと診断します。全FDの10%を占めています。

 

参照:機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-機能性ディスペプシア(FD)(日本消化器病学会、2014