日々の臨床⑥:12月29日金曜日<心身医学療法による痛みのマネジメント>

心身医学科(心療内科、脳神経内科、神経科を含む)

 

<心身医学療法による痛みのマネジメント>

sh

 

 

今年は多くの経験をさせていただきましたが、一般論ではなく具体的なケースを通して、しめくくりたいと思います。そこで再びS.Hさんのレポートに登場していただくことにしました。

 

 

S.Hさんを苦しめていたのは、全身の痛みという身体的苦痛のみではなく、<認知度が低く、理解されていない病に不安>とあるように精神的苦悩を伴うものでした。

 

S.Hさんの場合は周囲の大切な人々から<理解されない>だけでなく、S.Hさん自身も自分の病気を理解できていなかったのですから、<不安で精神肉体共に疲れ、限界寸前!>になることは当然の結果であったと考えられます。

 

それを考慮してもなおイライラなどの精神症状が更年期障害の症状に類似していることを見逃さないこと、S.Hさんを苦しめているのは身体的苦痛以上に精神的苦悩が優っていることに気づけたことが、彼女の治療成功の決め手になったようです。

 

 

線維筋痛症のように全身の激しい痛みが慢性的に続くと、<日常生活に支障>が出るだけでなく、

<理解されない病に不安で精神肉体共に疲れ限界寸前!>の状態に至ると、ほとんど精神病と見分けがつきにくくなります。

 

実際にS.HさんをCMI健康調査票で評価してみると神経症判別領域Ⅳで、易怒性(イライラや怒りっぽさ)を伴う極度の神経症に分類され、そのためMMPIというより厳密な人格検査では神経症圏ではなく、強い不安を伴い心気症・抑うつ・ヒステリー傾向の強い精神病圏という判定が得られました。

 

実際には、慢性疼痛による心身症であり、精神病患者ではありません。

 

 

線維筋痛症は高円寺南診療所できちんと対応すればほとんどの例で改善できる病気であるにもかかわらず、医療界の全般的趨勢では未だ難病と誤解されたままでいます。

 

脳神経内科や整形外科あるいは痛みの専門家であるはずのペインクリニックの医師でさえ、匙を投げて精神科受診を意図しつつ心療内科という表現に変換して患者に勧めることがあります。

 

これが患者さんにとっては事実上、大問題になっています。

 

 

なぜなら、心療内科を標榜する医師の99%は心療内科専門医ではなく、精神神経科医や一般内科医だからです。

 

そこで、精神病との一方的な判断がなされ向精神病薬が処方され、身体病である側面はほとんど無視されてしまうので、根本的な治癒に至らず、半永久的に精神病患者に仕立てられてしまうのです。

 

 

そこで、皆様にお願いがあるのですが、難病で苦しむ人々の救済のためには、同じ難病で苦しみながら克服してきた皆様の協力が必要です。

 

今年は、多くの皆様がHP公開に向けてのレポートを提出してくださったことに、大いに感謝しております。

 

中には、これらのレポートを読むだけで、絶望から希望へ、社会的引きこもりや諦めから、積極的な取り組みの姿勢に転換し、心身共に顕著に回復を遂げることにより自信を取り戻し、家庭や社会での復権に辿り着けた方々がいらっしゃいます。

 

 

一人の医師のみ、一軒の小さな診療所のみでできることには、限りがあるとこれまで何度も思い知らされてきました。

 

しかし、もし、今後も皆様のより深いご理解と暖かいご協力があれば、高円寺南診療所は無限の可能性を発揮できると公言して憚らない位にまでの社会貢献できるはずだと信じております。

 

 

どうぞよろしくお願いいたします。